『バットマン:ゴッサム・バイ・ガスライト』はバットマンシリーズの正史ではない、別の世界観(エルスワールド)を描いた作品だ。
有名な未解決猟奇殺人事件である「切り裂きジャック」事件を題材としている。
この記事では『バットマン:ゴッサム・バイ・ガスライト』の登場人物、ストーリーを整理しながら作品の見どころに迫る。
登場人物紹介
- バットマン(ブルース・ウェイン)
本作の主人公。
昼はプレーボーイで大富豪のブルース・ウェイン。
夜は自警活動を行うバットマン。
- 切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)
娼婦を狙った連続殺人犯。正体は分からず、警察は手を焼いている。
英国紳士風のシルクハットにコート姿で手持ちのカバンからナイフを取り出し、犯行を重ねる。
- セリーナ・カイル
ゴッサム・シティでは一目置かれる女優。
女性の地位向上のための活動に熱心である。
正史のバットマンシリーズではキャット・ウーマンの中の人。
- ハービー・デント
ブルースの友人。セリーナに好意を抱いている。
自分勝手で嫌味な検事。
正史のバットマンシリーズではトゥーフェイスとして知られる。
ストーリー
舞台は19世紀のゴッサム・シティ。女性を狙った連続殺人犯・切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)が現れ、市民は恐怖に怯えていた。
バットマン(ブルース・ウェイン)は単独で自警活動をしつつ、切り裂きジャックを追っていた。
夜の街をパトロールしていると、女優のセリーナ・カイルの後を尾ける不審な男を見かける。
セリーナは食肉処理場に逃げ込むと隠していた鞭を取り出し、ナイフの男に応戦した。
しかし、逆に首を絞められ殺されそうになったところに、バットマンが登場。二人で男を撃退した。
バットマンは警察本部長ジム・ゴードンの家を訪れ、密かに捜査資料を入手した。
ブルースは、友人のハービー・デントに誘われセリーナが出演するミュージカルを見に行った。観劇後、セリーナと会話をしている最中に、切り裂きジャックの次のターゲットが知人のシスターだと気づく。
ブルースは急いでシスターの元へ向かうが、間に合わず、シスターは殺されてしまった。そのとき、ブルースの姿を見ていた者がいた。
シスターの葬儀に参列したブルースは、医師のヒューゴ・ストレンジから言伝を頼まれる。
「あなたは顔が広いから、バットマンに伝えてもらえないですか。私のオフィスにくるようにと」
ストレンジが去った後、ブルースの元に老婆がやって来て、シスターが殺された日ブルースの姿を見たことをネタに、金をせびってきた。
ブルースは毅然として相手にしなかった。
深夜、ストレンジのオフィスに突如切り裂きジャックが現れ、襲ってきた。その直後、バットマンが現れるが、切り裂きジャックはストレンジを振り捨て、逃走。
屋上に出たところ、通りがかりの飛行船のロープにつかまり逃げていった。バットマンもすかさず飛行船に飛び乗るが、背後から銃で撃たれ肩を負傷してしまう。
二人の戦闘の末に飛行船が爆発。マスクを取ったブルースは駆けつけた警官たちに追いかけられ、逃げ場がなくなったところに、馬車に乗ったセリーナから助けられる。
ブルースがバットマンであることを知ったセリーナは彼をかくまい、一夜を共にする。
その夜、橋の下では老婆の惨殺死体が発見された。
翌朝、ブルースは老婆の殺害容疑で逮捕される。セリーナに思いを寄せるデントの策略により、他にもいくつもの殺人の罪を着せられブルースは刑務所に投獄された。
ブルースはわざと暴動を巻き起こし、刑務所から脱獄する。
見どころ・感想
19世紀のイギリスを感じさせるゴッサム・シティの雰囲気
バットマンの舞台であるゴッサム・シティは本来アメリカのスラム街のような場所だ。
しかし、今回のゴッサム・シティでは、切り裂きジャックが犯行を行った19世紀のイギリスをイメージしたビクトリア朝の建築が建ち並ぶ。
特に殺人現場の一つとなる橋の下は今にもシャーロック・ホームズが登場しそうな雰囲気だ。
作中では当時を感じさせる会話も聞こえる。
冒頭の万博博覧会でのヒューゴ・ストレンジと女性の会話が面白い。
観覧車の説明を受けた女性が「時速24キロでの回転に人間の身体は耐えられるのか」と聞くと、ストレンジは医師として「大丈夫です」と保証する。
当時は車が発明されたばかりの時期であり、今のように高速移動する乗り物はなかった。
ちなみに本作での主要な移動手段は馬車だ。
バットマンのコスチュームにも若干のイメージ変化がある。
現在ではマスクの目の部分があまり出ていないのに対し、この作品では目の周りをかなり露出している。
その影響なのかバットマンに人間味が感じられるのは私だけだろうか?
バットマンの秘密基地・バットケイブには本来巨大なコンピュータなどが置かれていることでおなじみだ。
本作では時代を反映するように屋根裏のような小さい部屋に顕微鏡が置かれていた。
最近のバットマンシリーズのハイテクっぷりと比べると地味に感じた。その分探偵としてのバットマンの活躍にスポットが当たっている。
バットマンシリーズおなじみのメンバー集合
『バットマン:ゴッサム・バイ・ガスライト』にはバットマンシリーズでおなじみのメンバーが多く登場する。
- 冒頭で殺されるダンサーの女性:ポイズン・アイビー
- 警察本部長:ジム・ゴードン
- 怪しげな医者:ヒューゴ・ストレンジ
- ウェイン家の老執事:アルフレッド
通常のバットマンシリーズとは別の世界観ながら、ひょんなところに原作のキャラクターが登場するのが面白い。
特にヒューゴ・ストレンジの怪しさ、ブルースの正体を知っているのでは?と思わせるシーンにはニヤニヤしてしまう。
ちなみに原作コミック(未翻訳)に登場するのは、バットマンと「あのキャラクター」だけ。アニメ化にあたって他の登場人物は新たにキャストに加えられている。
おわりに
『バットマン:ゴッサム・バイ・ガスライト』はバットマンの「探偵」としての能力にフォーカスしている。
「切り裂きジャック」の謎と、シャーロック・ホームズを彷彿とさせるバットマンの名探偵ぶりをかけ合わせ、良質なミステリー作品になった。
アクションだけでないバットマン本来の姿を楽しめる作品だ。
ストリーミング視聴も可能だが、ディスク版には以下の映像特典が収録されている。
- 監督・脚本・製作総指揮たち3人による音声解説(オーディオコメンタリー)
- 原作のアメコミからのカットを多く使用した解説映像
- TVアニメ版バットマン2本:バットマン:ブレイブ&ボールド『Trials of the Demon!』(バットマンがシャーロック・ホームズとともに捜査するストーリー!) バットマン『Showdown』(ラーズ・アル・グールの息子が登場するストーリー)
などディスク版は本編にプラスして楽しめる要素が含まれていて魅力的だ。