2018年7月、オガツカヅオ先生の短編集『魔法はつづく』が発売された。
可愛い絵柄で、一読して「これがホラー漫画?」と戸惑うほど明るくハートウォーミングな話が多い作品集だ。短い話の中にもあっと驚く仕掛けが隠されており、ミステリーの要素も含んでいる。
この記事では、各話のあらすじと感想を「ネタバレなし」で書き綴る。
『魔法はつづく』収録作品のあらすじ《ネタバレなし》
『魔法はつづく』には9作品+おまけが収録されている。
「はじめましてロビンソン」
漫画家のアシスタントをしていた学(まなぶ)とケイコ。職場結婚した2人は不慮の事故により負傷する。
生還した学は、下半身が「透明人間」になっていた。
「かえるのうた」
15年ぶりに父と再会したユキはカラオケボックスにやって来た。一同で『かえるのうた』を輪唱していると延長確認の電話がかかってくる。受話器の向こうからは「かえるのうた』を歌うように催促する声が……。
「猫のような」
小学生のタツトは祖母からの電話で学校を飛び出し、側溝の下にいた幼児を救い出す。
祖母は病気で目が見えないのに不思議な力でしばしば外の出来事を見てきたように話すのだ。祖母が話す現場には、いつも謎の野良猫の姿があった。
「こくりまくり」
小学生の名倉は、クラスメートの木目米(きめごめ)さんから告白され「霊の見える子がタイプだ」と言って断ってしまう。
それから7年。高校生になった木目米さんは霊的な修行を積んで再び告白してきた。
「しあわせになりませう」
結納を明日に控えたみのりとたかし。みのりは結婚前に話したいことがあると言い、兄と親友二人をめぐる昔話を始める。この三人には「生き霊」がつきまとっていた。
「隣りのゾン美さん」
親の借金で困窮していたじんこは高校のクラスメートから、アルバイトを持ちかけられる。仕事内容は隣室に住むゾンビの世話だった。
「千年蟻と一日おかあさん」
マコは娘を連れて横断歩道を渡っていたところ、交通事故に遭う。
しばらくして目を覚ますと3歳だった娘が15歳になり、夫は青年から中年になっていた。
親子水入らずの時間を過ごす三人。夜になると、娘が「なぁまた千年蟻のお話を聞かせて、ママ」とねだってきた。
「よふさぎさま」
友人の亜矢子から誘われ、ランニングが日課になった知子。ある晩ランニング中に道をふさぐワニが現れる。
それは「よふさぎさま」と言って、女性の運命が大きく変わる予兆として人生の折々に登場するものらしい。
ある時は魚のコイ、ある時はボーリングのボール、ある時は噴水など、さまざまな形で変化を知らせる「よふさぎさま」だった。
「魔法はつづく」
6歳のえいじと従姉で11歳のじんこは藁人形の呪いで人を殺す。その報いとしてえいじはアトピーを患い、じんこは円形脱毛症になった。
ところが7年後町に戻ってきたじんこは、えいじに呪いが効いていなかったことを告げる。
『魔法はつづく』収録作品の感想《ネタバレなし》
不思議なハートウォーミングストーリー
ジャンルとしてはホラーだが、グロテスクな描写やスプラッタシーンはない。(唯一、ゾンビが登場するシーンだけが奇怪でグロテスクと言えるかもしれない。)
ホラーが苦手な人にもおすすめしやすく、読み終わったあとにほっこりする作品が多いのが本書の特徴だ。
それぞれに怪奇事件を扱っていながらも、明るい作風で絵柄も丸っこくてキュートなのがオガツ作品の魅力と言える。
後味も爽やかなものが多く、ズーンと落ち込んでしまうような話はない。私は、家族の愛情を描いた「はじめましてロビンソン」と「千年蟻と一日おかあさん」が特に好きだ。
心理サスペンスもあり
読後にゾッとする作品もある。「よふさぎさま」のラストにはあっと驚かされた。途中まで妖怪話のたぐいかと思わせておいて、それだけでは終わらない。
グロテスクなシーンは一切抜きにして恐怖を感じさせてくれる。
まずは無料ためし読みをチェックすべし!
『魔法はつづく』収録作の一部はリイドカフェ公式Webから無料で読める。
おわりに
オガツカヅオ先生の『魔法はつづく』を紹介した。
私は1話の「はじめましてロビンソン」で思わずウルッときてしまった。スピッツの『ロビンソン』をテーマ曲にしたさわやかなホームドラマだ。
オガツ作品は、ホラー漫画は苦手という人でも抵抗なく読める話が多いと言える。
次回はどんな魔法を見せてくれるのか、オガツカヅオ先生の作品を楽しみだ!