伊藤潤二作品の大人気シリーズである、双一シリーズ。そのなかでも私が大好きなのが『布製教師』だ。
私もおすすめの作品として伊藤潤二傑作選のおすすめ漫画10選で取り上げている。
この記事では『布製教師』のストーリーと私が選ぶおすすめポイントを紹介する。
『布製教師』双一シリーズ一覧
双一シリーズでは、少年時代の双一が活躍する双一(少年編)、大人になった双一が活躍する双一(大人編)がある。
『双一の勝手な呪い』は双一(少年編)の一つだ。
『布製教師』の人物相関図
『布製教師』では双一が柳田先生、曽我先生、若山の人形を作り、本人たちと入れかえてしまう。
先生2人がおかしくなってしまった原因が双一にあるとにらんだ若山でしたが、布製教師2人に狙われる存在になる。
『布製教師』には双一が百合子を好きだという描写がないが、これは前話『双一の家庭訪問』で明かされている。
『布製教師』のストーリー【ネタバレ】
2学期が始まった学校。
クラス委員長の若山降雪が登校すると、孝太がやってきて若山の宿題を見せてくれとせがむ。
若山からなんとか許可をもらい、宿題を見ていた孝太。その宿題に双一の釘が刺さる。
双一の態度に怒った若山は、柳田先生に言いつけると言う。
ちょうどそのとき、柳田先生が教室に入ってきた。釘を口に含みながら。
双一は学校の外で木の陰に隠れながら釘の飛ばし合いをしていた。
その様子を見た曽我先生が双一に注意し、飛ばし合いをしていた相手も叱ろうとしたときに出てきたのは柳田先生だった。
真面目だった柳田先生がこんなことをするのはおかしいと話していると、双一の飛ばした釘が柳田先生の額に刺さる。
しかし、柳田先生は気にした様子もなく、楽しそうに双一を追いかけていった。
柳田先生の変化を不思議に思っていた若山たち。
そのうちの1人が、柳田先生は顔に変なシワと縫い目があり、表面もザラザラで布のようだったと言い、ぬいぐるみになってしまったのではないかと推理する。
教室では柳田先生が授業を行っていた。
しかし、その内容はまともなものではなく、若山がそれを指摘すると柳田先生からグラウンド100周を言いつけられてしまう。
真面目に走る若山。その様子を見つめる女子がいた。
なんとかグラウンド100周を走りきった若山と様子を見に来た孝太のところに、安城百合子が現れる。
安城の話始めた内容は、
- 夏休み中に柳田先生に頼まれて双一の家に行ったこと
- 頼みにきた柳田先生がやつれていたこと
- 双一を追いかけて屋根裏に上った柳田先生が降りてきたときには変になっていたこと
そして、今の柳田先生はニセモノで、屋根裏で何かあったのではないかという結論に行き着く。
3人が話しているところを、こっそり見ていた双一。
双一を見つけた若山は逃げる双一を追いかけ、スボンを掴むが、スボンがズレただけで、結局逃げられてしまう。
若山にスボンをズラされたことを恨む双一は、若山に呪いをかけようとしていた。
若山が鏡を見ると、口の周りにはヒゲが生えていた。
そのヒゲを見た柳田先生は、ヒゲが偉そうだと怒り、若山が反抗的だとして、カミソリを持ち出し「剃ってやる」と言いながら若山に迫る。
若山がいよいよピンチの状態に陥ったところで、曽我先生が助けに入った。
曽我先生は校長が柳田先生を呼んでいると伝え、柳田先生はその場を離れる。
若山が柳田先生ともみ合った際に切れた柳田先生の指は布で出来ていることが分かり、若山は柳田先生がニセモノだという確信を得る。
校長室で校長と話す柳田先生。
校長は、最近の柳田先生の行動について注意しようとするが、柳田先生の暴力を受けてしまう。
他の教員が助けに入ると、柳田先生は窓から逃走した。
曽我先生のアパートに集合した若山たち3人。
曽我先生と約束の時間になっても曽我先生は現れず、部屋の鍵も開かなかった。
3人が諦めて帰ろうとしたとき、曽我先生が近づいてきた。それは布製の曽我先生だった。
必死に逃げる3人。
孝太がつかまってしまい、絶体絶命のところで焚き火を見つけた若山は、そのなかから火のついた木を取り出し、曽我先生を当てた。
曽我先生は逃げ出し、3人は難を逃れた。
双一宅の前で様子をうかがう3人。すると屋根裏から双一が出てきた。
屋根裏に忍び込む若山と孝太は、そこで作り途中の若山のぬいぐるみを発見する。
完成する前にバラそうとする孝太を止める若山。
若山のぬいぐるみが動き出したときに、本人がどうなるのか興味があり、それによって先生たいの居所が分かるのでないかと言う。
屋根裏から脱出した若山と孝太は双一の兄に見つかり、叱られるが、百合子がかばい、これまでの経緯を説明する。
翌日の学校には柳田先生が来ておらず、校庭では曽我先生が暴れていた。
そのとき、双一宅の屋根裏部屋では双一の手によって布製・若山が完成しようとしていた。
そこに兄が現れ、双一を問い詰めようとしたところで、双一は逃げ出し、布製・若山もどこかへ行ってしまった。
布製・若山の動きを楽しんでいた双一の後ろには柳田先生が待ち構えており、釘飛ばしで遊ぼうとしてくるが、双一は乗り気ではないようだ。
校庭で暴れる曽我先生の様子を見に来た若山と孝太。
若山は力が入らず、その場で膝をついてしまう。人形に魂が吸われているようだ。
その2人を見つけた曽我先生は復讐とばかりに、襲いかかる。しかし、その横を通り過ぎたのが布製・若山。
曽我先生は布製・若山を倒すことに夢中になる。
布製・若山と曽我先生が戦っている横を双一と柳田先生が走り抜けた。
追い込まれた双一が「離せ」というと、柳田先生と曽我先生がその場に崩れ落ちた。こうして事件は終わった。
本物の柳田先生と曽我先生は救出され、若山のヒゲも消えた。双一はおとなしくなったものの、何を考えているかは分からない。
『布製教師』の見どころ・おすすめポイント
布でできた教師たちが大はしゃぎ
布で出来たニセモノの教師が暴れまわると聞けば、何やら恐ろしい。
しかし、それが双一シリーズとなれば、なにかコミカルなものになる。
双一と楽しそうに遊ぶ柳田先生や、ヒステリックに迫ってくる曽我先生は憎めないキャラクター。
つぎはぎの顔は怖いのですが、それを帳消しにするぐらいの可愛さがある。
私は特に曽我先生がお気に入りだ。
校庭で暴れまわり、布製・若山を引き裂くところは『布製教師』の一番の見どころ間違いなしだ。
布製・曽我先生が怖すぎる問題
ここまで読んで頂ければ、私が曽我先生好きだということは分かって頂けると思う。
曽我先生のアパートで若山たちを曽我先生が対峙するシーンが布製・曽我先生との初対面だが、曽我先生の表情が酷い。眉毛と目がつり上がってるわ、口のなかの葉は全部釘だわ、怖い要素しかない。
若山の攻撃によって頭が燃えてしまった曽我先生は校庭に現れると、より大暴れ。このシーンの曽我先生の表情を見るだけでも、面白い。もう『布製教師』の主役は曽我先生だ!
『布製教師』はちょっと笑えるホラーが好きな方におすすめ
『布製教師』のみ読みたい方はKindle版がおすすめ。
『布製教師』が収録された単行本を購入するなら『伊藤潤二傑作集3 双一の勝手な呪い』
双一シリーズ(少年編)がまとめて収録されている。
※『双一の愛玩動物』『魅入られた双一』は含まれません