笑ゥせぇるすまん『リストラの男』徹底考察・解説【ネタバレあり】

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笑ゥせぇるすまん『リストラの男』徹底考察・解説【ネタバレあり】

笑ゥせぇるすまんマニアの私が子どものころに見て、印象深かったのが『リストラの男』だ。

当時流行りだした「リストラ」を題材にしたストーリーで、結末には子どもながらにショックを感じた。

この記事では『リストラの男』のストーリーを紹介しつつ、原作・アニメ版を比較し考察する。

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『リストラの男』のお客様

笑ゥせぇるすまん『リストラの男』徹底考察・解説【ネタバレあり】01
出典:藤子不二雄A 笑ゥせぇるすまん4巻 p24『リストラの男』(中公文庫)
  • 氏名:彼木 尚平(かれき しょうへい)
  • 年齢:53歳
  • 性別:男性
  • 職業:会社員(アニメ:セールスマン)

『リストラの男』のあらすじ(原作)

彼木は公園で愛妻弁当を食べていたところ、背後からにゅっと顔を突き出した喪黒に突然話しかけられる。

彼木は「仕事がありますので」と言ってそそくさと立ち去ったが、その後も一日中公園で時間をつぶしていた。

夜になり、再び現れた喪黒から「なにか力になれるかも……」と手を差し伸べられ、連れ立って《バー魔の巣》へと向かった。

彼木は、リストラの名目で苦手な営業職に配置転換され、売上が作れないと悩みを打ち明ける。

そこで喪黒からコーチとして凄腕営業マンの只野を紹介される。

只野から営業手法を学んだ彼木はやる気になり、自ら飛び込み営業に向かうが……。

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【ネタバレ注意】
ここから先は作品の結末に言及している。未見の方はご注意願う。

『リストラの男』の見どころ解説・考察

凄腕営業マン・只野凡児

笑ゥせぇるすまん『リストラの男』只野凡児
出典:藤子不二雄A 笑ゥせぇるすまん4巻 p32『リストラの男』(中公文庫)

喪黒が連れてきたのは彼木と同じく車のセールスマン、只野凡児(ただのぼんじ)。

いかにも平凡そうな名前、人畜無害そうなニコニコした顔。その風貌は少し頼りない。

えむ

しかし、この男はやり手

只野はまず自分の車を顧客が見えないところに駐車する。

その理由はセールスマンが顧客よりいい車に乗っていたら顧客がシラケるからだ。

車を駐車すると、住宅街を歩き回って車のメーターをチェック。

買い替え時期の車を見つけると持ち主に断りもなくいきなり洗車をはじめる。

当然驚いて声をかけてきた持ち主に対して、只野はボランティアで洗車をしているだけだと言って、お礼も受けずに立ち去っていく。

彼木は新品同然に洗車をしてしまっては車を買い替えようと思わないのでは?と疑問を持つが、只野は「この奉仕が後々生きてくる」と言ってのける。

只野はただ商品を売るだけではなく、見込み顧客から信用を得ることを第一にしている。

洗車は只野にとって一種の先行投資だ。投資と回収のタイミングを知ることがトップセールスマンの秘訣なのだろう。

ちなみに『リストラの男』では喪黒もセールスの極意を語る。

トップセールスマンの極意は、お客に強引に買わせるのではなく自然に商品を買いたくさせるということなのです

藤子不二雄A 笑ゥせぇるすまん 4巻 p36 『リストラの男』(中公文庫)

なかなか良い極意であり、腑に落ちるものだ。

えむ

やはり喪黒もやり手セールスマンだな……

急いては事を仕損じる

成果が出ないからと言って、焦って行動するのは逆効果だ。

『リストラの男』ではセールスのコーチである只野が相手とじっくり信頼関係を作っていく大切さを説いているにも関わらず、彼木は待ちきれずに押しかけていってセールストークをはじめてしまう。

その結果として相手を怒らせ、追い返されてしまった。

彼木は喪黒からもう少し只野の手法を学べと言われたのにそれも聞かずに営業手法を理解した気になっていた。

結局のところ、彼木は焦るばかりで営業のイロハは全く習得していなかったのだ。

笑ゥせぇるすまん『リストラの男』怒られる彼木
出典:藤子不二雄A 笑ゥせぇるすまん4巻 p38『リストラの男』(中公文庫)

リストラ制度

作品の初出は1992~93年。バブル崩壊の時期に当たる。

リストラはRestructuringの略語で、組織の再構築を意味する。

本来は人員を増やして構築しなおすこともあるのだが、現在では単に人員削減・クビを意味する言葉となってしまった。

彼木は事務職から営業に配置転換された。

表向きは単なる異動と見せかけ、わざと不得意部署に送ることで本人から自主退職を言い出すように仕向けられている。

今や、どの業界でも行われるありふれた手法となったが、当時としては新しかった。

えむ

『リストラの男』は現在でも通用する話なのだ

今の会社にしがみつこうとして不向きな営業をやるよりは、適性のある仕事を探したほうがよかっただろう。

あえて営業を続けさせた喪黒は罪深い。

アニメ版『リストラの男』解説

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『リストラの男』はアニメ全126話のうち、125話目として放送された。

スペシャル回のため、通常回よりも尺が2分ほど長い。その分演出も強化されている。

たとえば、冒頭部分。

彼木が公園で虚しく時間を潰している様子が丁寧に描かれている。

タバコを吸ったり、両手でカイロを持って暖を取ろうとしたり、石像の前に座り込んだり……。

哀愁ただようカットがたまらない。

画面を分割してパズルのように小さく見せる演出は、追い詰められた彼木の視野が狭くなっている様子を暗示しているのだろう。

念仏のように「リストラ、リストラ」と上司に連呼され、モブキャラが迫ってくるシーンもまたいい。

ここまで心理的な圧を感じていたら、成果を急ぐ気持ちも理解できる。

一方でアニメでは原作から削除されたシーンもある。

原作中には、彼木が喪黒と飲んだ後、自分なりに営業を頑張る描写があるが、アニメ版ではすべてカットされた。

アニメだけ見ると彼木が喪黒に頼り切りに見える。

結末もアニメ版の方がいい。

抜け殻のようになった彼木が公園で遊ぶ子どもの三輪車を洗車しながら「今度はおじさんのところで三輪車を買ってね」と言うシーンに、言いしれぬ恐怖を感じた。

私はリアルタイムでこのラストを見て、子どもながらにリストラの怖さを植え付けられた。

喪黒のかわいいところもある。

締めで三輪車をこいでいる喪黒はとてもプリティー。

曲がり角へ消えたかと思うと急に喪黒ヘリが飛び立ち、驚かされる。

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アニメ版『リストラの男』

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【参考】
・藤子不二雄A 笑ゥせぇるすまん 4巻 p23-38 『リストラの男』(中公文庫)
・笑ゥせぇるすまん『リストラの男』(ポニーキャニオン)



笑ゥせぇるすまん『リストラの男』徹底考察・解説【ネタバレあり】

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