2018年10月19日から2019年1月6日にかけて六本木ヒルズ・52階の展望台で行われた『藤子不二雄(A)展 (A)の変コレクション』をジョヴァンナと共に観覧した。
この記事では、展示会の模様をレポートする。
チケットの引き換え
チケットは事前にセブンイレブンの予約システムから、グッズ付き前売券(「変な前売券」)を購入した。目当ては喪黒と『明日は日曜日そしてまた明後日も……』の缶バッジだ。
展望台へと通じるエントランスに入り、まずは予約券と入場券を引き換えする。ここで「オリジナルグッズは、ミュージアムショップで券を提示の上引き換えしてください」と案内があった。
52階へ直通のエレベーターで、会場(東京シティービュー)に向かう。手荷物は100円デポジット式のコインロッカーに預けた。
なお、今回の展覧会の展示は全て写真撮影が可能だ。(一部フラッシュ禁止のゾーンあり)
バー「魔の巣」を模した「エントランスゾーン」
ゲートをくぐると、喪黒福造が行きつけとするバー「魔の巣」のエントランスがあった。
いきなりテンションがあがる私。
部屋のど真ん中には、等身大のA先生の像が。
ドーン!のポーズが決まっていてカッコイイ。
ここにはカメラマンが控えており、夜8時まで写真撮影してくれるサービスがある。
(代理でのスマホの撮影無料、小さい写真のプリントサービス無料。大きいサイズの写真のプリントのみ有料1,300円)
先生の背後には、巨大なAの文字のオブジェがある。裏・表にぎっしりキャラクターが配置され、「ハットリくん」「怪物くん」などの有名キャラから、喪黒福造の弟「喪黒福次郎」『万年青』主人公・清一のなど、マイナーキャラまで幅広くチョイスされていた。
部屋の奥には「魔の巣」のバーカウンターが再現されていた。
どうやら、ここのゾーン自体を「魔の巣」内部に見立てた造りのようだ。
カウンターに座る喪黒が愛嬌たっぷりの笑顔で出迎えてくれる。
マスターだけが予算の関係なのかペラペラのボードでできているのが、惜しかった。
このゾーンには『怪物くん』のドラマで主役の怪物くんを演じた、嵐の大野智氏より贈られた色紙が飾られていた。
会場内はビルの展望台でもあるため、都内の景色が一望できる。
われわれが訪れたのは夜の時間帯で東京タワーの夜景もバッチリ見え、外国人の観光客が多数訪れて、思い思いに写真撮影を楽しんでいた。(なお、私は夜景に興味がないため、写真は一枚もない。)
上方の窓にはプロジェクションマッピングによる『笑ゥせぇるすまん』のオープニングシーンが流れており、気分を高めるのに一役買っていた。
トキワ荘の一室を再現した「青春のまんが道」
次なるゾーンでは「トキワ荘」を再現した部屋が現れる。
1950年代より手塚治虫をはじめ、藤子不二雄の2人、石ノ森章太郎、赤塚不二夫、つのだじろうなどそうそうたる漫画家たちが暮らしていたアパート。
豊島区にあったが、老朽化のため1982年に取り壊された。
机の上には画材のほか、国語辞典や江戸東京学辞典や時計、ラジオが配置されている。
このこじんまりとしたスペースで先生が猛烈に働いていたと思うと、胸にじんとくるものがある。座敷に上がって写真を取ることも可能だ。座布団に座ってポーズを取っている人もいた。
写真撮影スポット「ポップゾーン」
ここは『怪物くん』『プロゴルファー猿』『ハットリくん』など、A先生の作品の中でも明るくポップな世界を紹介したスポットだ。自分も登場人物の一人になりきって、作品世界に入り込める。
私も猿になりきって、ポーズを取ってみた。
不気味な「ブラックユーモアゾーン」
「ブラックユーモア」ゾーンでは、作品から抜け出したコマが所狭しと壁を埋める。
部屋の中央にはデスクがあり、そこからグワッと原稿が立ち昇っている様は迫力満点だった。
この部屋にも仕掛けがある。空白の額縁だけがあるところはフラッシュを焚いて撮影すると、光に反応して絵が浮かび上がるしくみになっていた。
これも面白くて、全部をバシャバシャ撮影して楽しんだ。
壁一面の作品の中で目立っていたのは『水中花』からのひとコマ。後ろから光を当て、カラーで美しく表現されていた。
中国から伝わったおもちゃで、紙製の花を水中に落とすと一度に美しく花開くもの。
この水中花をコレクションしている青年を描いたブラックユーモア作品で、初出はビッグコミック1970年5月25日号。
単行本では『藤子不二雄(A)のブラックユーモア[黒イせぇるすまん]』などで読める。
先生の思い入れのある作品なのだろうか?
この部屋にはミニシアターが併設され、われわれが訪れた日には『明日は日曜日そしてまた明後日も……』を音響付きでスライドショーにしていた。この作品は、時期によって展示替えがあるようだ。
おまちかね「笑ゥせぇるすまんゾーン」
巨大な本の中に潜む喪黒が出迎えてくれる。顔は凹んだ作りになっており、どの角度から見てもこちらを見ているようで、いい意味で気持ち悪い。
壁には「47階からの眺め」の漫画が展示されていた。
ところどころアクセントカラーが使用され、喪黒が名刺を差し出すところは赤で印刷されている。このときの肩書きは「友愛事業団 外務主任」
喪黒の名刺には複数のバージョンが存在する。作品初期には「友愛事業団」という所属名が記されていたが、単行本では写真の通り「ココロのスキマお埋めします」と変更されている。
もしかするとここの壁に展示されていたのは変更される前、雑誌掲載時のバージョンかもしれない。
ここの撮影コーナーにも一工夫があった。床に座ってポーズを取り、写真を上下回転させると、「ホーホホッホ」と笑うセリフの渦の中に吸い込まれていく姿が撮れる。
コツは渦の中央に指先を合わせて、体をくの字に曲げること。
喪黒ファンにはぜひトライしていただきたい。
一番見たかった「(A)の変コレクション」
最後は「変コレクションゾーン」
A先生といえば、変わったものをコレクションしていることで有名だ。ここではその一部が展示されている。
最初にあったのはインドネシア・バリ島の民族衣装をつけた木彫りの人形。
そのお隣にはインドの民族衣装を着た女性の人形があり、『目のない舞姫』を着想したもととなった旨、キャプションがあった。
『魔太郎がくる!!』のエピソードに登場する手のモチーフとなった「手のクリップ」同じく『ブラック商会変奇郎』に登場する大きな箱のモチーフとなった「キイのいらない宝石箱」など、着想のもととなったコレクションを見ることができて、心が踊った。
個人的には、魔太郎の等身大衣装や、変奇郎のマスク・首飾りの展示が良かった。
展示の最後には、A先生からプレゼントのQRコードがもらえるスポットがある。表示時間は一瞬なので、コードリーダーを構えておいたほうがよい。
Twitterのアプリを入れている人は、プロフィールの欄から2回のタッチでコードリーダーを呼び出せる。
散財間違いなしのグッズショップ「怪奇や」
展示を見終わるとグッズショップ「怪奇や」が待っている。
ポストカード、キーホルダー、ポスター、Tシャツ、魔太郎フィギュアなどなど、幅広いラインナップ。一番の高額商品はスケートボードだろうか。
私は自分の好きなブラックユーモア作品のグッズを中心に、2万円ほど購入した。
オリジナルグッズ付き前売券「変な前売券」で入場した人は、このショップで引換券を渡して缶バッジがもらえる。ランダムと言っても実際は選ばせてくれるんじゃないかと淡い期待をしていたが、銀の袋に梱包されており、本当にランダムだった……。
私は喪黒福造と『明日は日曜日そしてまた明後日も……』の坊一郎を狙っていたが、同行したジョヴァンナ氏が引き当てたのは怪物くんと坊一郎だった。
喪黒が欲しかった……
私の感想
A先生のファンとして、たまらない展示会だった。
今まで、どちらかと言えば明るいテイストの『忍者ハットリくん』『怪物くん』などに光が当てられることが多かったと思う。
なにかと言えば炎上を恐れ、自粛ムードが漂うこのご時世に、あえてブラックユーモアを大々的に取り上げ、展示してくれたのは嬉しいかぎりだ。
会場内は全て撮影可能・ところどころにインスタ映えのするスポットや、来場者を積極的に参加させるイベントを用意しているところに、A先生らしい遊び心を感じた。
本音を言えば、先生の変コレクションをもっと見たかった。最後の1スペースだけ、しかもキャラクターグッズが中心でコレクションの紹介は少なかったのが、残念と言えば残念なところだ。
販売されているグッズの充実度には大満足だった。私のコレクションが一気に充実した。
早速部屋に飾ったのは喪黒の日めくりカレンダー。
他にも3枚購入したポスターなどを額に入れて飾りたいと思う。
開催情報
- 期間:2018年10月19日~2019年1月6日
- 時間:10:00~22:00(21:30最終入場)
- 場所:東京シティービュー(六本木ヒルズ・森タワー52階展望台)
- 入場料:前売り1,500円、グッズ付き前売り1,800円、その他当日券もあり
- Web:藤子不二雄(A)展 -(A)の変コレクション- 公式ホームページ ※リンク切れ