伊藤潤二作品のなかでも、一番気持ちが悪い作品と言っても過言ではない『グリセリド』
作品を埋め尽くすアブラ!あぶら!油!脂!
あなたはこのあぶらぎった気持ちの悪さに耐えられるだろうか?
この記事では『グリセリド』のストーリーと私が選ぶおすすめポイントを紹介する。
『グリセリド』のストーリー【ネタバレ】
唯は富士山が見える街に住んでいる。
家が嫌いだった唯は、富士山を見て陰鬱な気分を発散していた。
唯の自宅では、小さな焼肉屋「だるま」を経営しているが、店内の換気が悪く、家はベトベトと脂にまみれている。
父子家庭だが、父の掃除は行き届かず、布団や衣類までもが脂ぎっていた。
父は脂性でいつも脂ぎっているし、唯の兄(五郎)は厨房にあるサラダ油を盗み飲みするしている。
脂にまみれた生活をしていた唯は、部屋に充満する油の濃度「油度」を感じられるようになってしまう。
兄は思春期に入ると顔中にニキビができ、それが原因でイジメられるようになる。
そのストレスから唯に当たる兄を止めに入った父だが、兄は父にも怒りを向け、顔中にニキビが出来たのは父のせいだと怒鳴り、取っ組み合いのケンカを始めた。
それからの兄は部屋に引きこもり、油を飲む毎日を送っていた。
ある日、兄は唯を呼びつけ、油と新しい布団を買ってくるように言いつける。
言いつけながらもイライラした兄が、顔をギュっと手で覆うと潰れたニキビから脂が飛び、唯の顔にかかった。唯は咄嗟に気持ち悪いと言ってしまうが、それが兄の逆鱗に触れる。
兄は唯に馬乗りになると、自分の顔を両手でギュっと押さえ、大量の脂を唯にかけた。
そして、唯の首に手をかけるが、父が後ろから兄を殴り、唯を助けた。
兄は事切れた。
夜道を歩くサラリーマンたちは「焼肉だるま」の話をしていた。
脂ののったいい肉が出る店だと。
店に入ったサラリーマンたちは「おいしい肉」を注文するが、父は品切れだと答えた。
唯は奇妙な夢を見るようになっていた。富士山から吹き出す脂。その脂に流される唯。
この奇妙な夢を見たあとで富士山を見ても、むかしのように気分がスッキリすることはなかった。
唯の顔にもニキビができるようになっていた。
ずっと家に引きこもる唯を心配して父が声をかけるが、唯は相手にしない。
そして、唯は脂の濁流に流される夢を見る。
唯が飛び起きると、父が唯にサラダ油を飲ませていた。
兄のようになるのを恐れた唯は、父を警戒するようになる。
しばらく店を閉めた父は、サラダ油を飲んでいた。
父の脂性は悪化し、風呂には油の膜が張り、布団にはより脂が染み込んでいる。
ある日、トン!トン!という音が聞こえた唯は、音のする方へ向かう。
すると父が包丁を握り、まな板に向かっていた。
まな板の上には、膝から下の部分がのせられている。
そして、父の膝辺りからは、脂がしたたり落ちていた。
『グリセリド』のおすすめポイント
とにかく気持ちが悪い
『グリセリド』は読んだときのインパクトが強烈だ。
さすが伊藤潤二先生、よくこんなに気持ちが悪い作品が書けるなと思った。
一番気持ちが悪いシーンは、兄がニキビを潰した脂を唯の顔にかけるシーンだが、その様子が分かりやすい動画があったので、紹介する。
ちなみに、アヒージョが唯の顔で、ボトルが兄の顔。どれだけ気持ちが悪いか分かって頂けただろうか?
どんどん上昇する「油度」
『グリセリド』では、唯が部屋の空気に含まれる油の濃度「油度」を伝えてくれる。
100%に向かってカウントされていく油度を見ながら、物語はどうなっていくのか。
この気持ち悪さが増大していくのか、ゾクゾクする油度カウントが楽しめる。
『グリセリド』は気持ちが悪いものホラーが好きな方におすすめ
『グリセリド』のみ読みたい方はKindle版がおすすめ。
『グリセリド』が収録された単行本を購入するなら『伊藤潤二傑作集11 潰談』
双一と淵さんのエピソードも2作品収録されている。