伊藤潤二作品のあらすじ、登場人物はもとより、原作とアニメの違いや私が気になるポイントについても深堀りしていく【伊藤潤二徹底考察シリーズ】
この記事では、伊藤潤二作品の大人気キャラクター淵さんの初登場作品『ファッションモデル』をピックアップ。
淵さんの魅力を中心に『ファッションモデル』を読み解いていく。
『ファッションモデル』あらすじ
朝から嫌な予感を感じていた岩崎は、ふらっと喫茶店に入る。
そこでたまたま読んだ雑誌で不気味なモデルを見つけてしまう。
それ以降はモデルの顔が頭のなかから消えず、岩崎が映画サークルで担当している脚本も書けなくなる。
時が経ち岩崎はモデルのことを忘れていったが、映画サークルで公募したヒロインに例のモデルが応募してきた。
面白がった映画サークルのメンバーは、モデルを撮影に呼んでしまう。
淵さんが登場する伊藤潤二作品
淵さんは主役としてシリーズ化されているキャラクターではないが、『ファッションモデル』以外の伊藤潤二作品にも登場する。
淵さんの登場作品は、双一シリーズの『噂』『お化け屋敷の謎』『双一前線』、淵さんメインの『ファッションモデル』『ファッションモデル・呪われたフレーミング』
双一シリーズは脇役扱いだが、その存在感が主役級だ。
他作品のネタバレ注意(+で開く)
『噂』で出会った淵さんと双一は恋仲になり、その2人の子供が『お化け屋敷の謎』『双一前線』に登場する。
『ファッションモデル』人物相関図
『ファッションモデル』に登場する人物は、岩崎をはじめとする映画サークルの4人。
そして映画の出演者として呼ばれたヒロイン役の珠枝、ファッションモデルの淵さんだ。
『ファッションモデル』で、影の首謀者とも言えるのが、織田。
織田の悪ノリがなければ、岩崎と淵さんの関係はモデルと読者のままだった。
珠枝はかなりの美少女でヒロインにふさわしいのだが、嫉妬にかられた淵さんの餌食になってしまうのが残念だ。
『ファッションモデル』考察
ファッションモデル・淵さんの身長を予想してみる
淵さんの魅力といえば、その圧倒的な存在感だろう。
一度見たら忘れられないビジュアルは、見るものを虜にする。
もちろんファッションモデルとして活躍しているだけあって、かなりの高身長である。
顔だけ見ると、顔が大きいと感じてしまうが、身長から考えると小顔の部類なのではないだろうか。
その身長は織田と並んでいるシーンを見るとだいたい予想がつく。
NHK おはよう日本「伸びが止まった!?日本人の身長」(リンク切れ)によると、17歳日本人男性の平均身長は大体170cm。
年齢は違うが、織田の身長が170cmだと仮定する。
淵さんは、織田よりも頭2つ分ほど高いため、頭2つ分・30cm×2=60cmをプラス。
ここから予想できる淵さんの身長は230cmとなる。
なかなかの高身長モデルだ。
ミステリアスな女性・淵さん
淵さんにはミステリアスな面もある。
そもそも淵さんがなぜファッションモデルとして活動しているのか謎だ。
岩崎が『ファッションモデル』の冒頭で淵さんが載っている雑誌を読んでいるが、ファッション雑誌なのに淵さん写真が顔のアップばかりなのだ。
メイク特集ならば分かるのだが、淵さん以外のモデルはバストアップの写真が載っている。
もはやファッションはどこいったのかというぐらい顔ばかりで、ファッションモデルとして起用されているのか疑問だ。
さらにプロのモデルが、アマチュア映画のヒロインに応募してくるところも不思議なところ。
新しいジャンルの仕事に挑戦したかったのかもしれないが、事務所経由で仕事を探せなかったのだろうか。
淵さんにはミステリアスな部分が多い。
ピュアな女性・淵さん
『ファッションモデル』での淵さんは怖いイメージが先行しているが、ピュアな一面もある。
淵さんと岩崎の出会いは、撮影前に映画関係者が集まった喫茶店。
そこで織田から岩崎が淵さんのファンだとイジられるが、このときの淵さんの岩崎を見る目に注目して欲しい。
無表情に見えるが、淵さんの口角がわずかに上がっている。
喜んでいるが素直に表現できない淵さんが見られるシーンだ。
映画撮影中も淵さんは、岩崎をずっと目で追っている。
淵さんが森の中に入っていく岩崎を追っていくシーンでは、言葉では伝えられなくても、岩崎に好意を持っているのが分かる。
その証拠にここでも、淵さんの口角が少し上がっているのだ。
ここまではピュアな淵さんだが、珠枝、三宅と消化していき、岩崎と二人きりになったところでは「二人だけになれたわね」なんて言って大胆になる。
一線を超えたら一気に距離を詰めてくるタイプだ。

伊藤潤二先生のファンで淵さんを知らない人はもぐりだ
アニメ版『ファッションモデル』
原作との違い
アニメ『伊藤潤二コレクション』が放送される前から番宣に淵さんが起用されており、アニメではメインキャラクターとして扱われていた。
原作では、岩崎が淵さんへの恐怖心を断ち切るために、本屋で淵さんが載っているファッション雑誌を探すシーンがあるのだが、アニメでは丸々カットされている。
このシーンは岩崎がいかに淵さんのイメージに恐怖を抱いているのかを伝える大切なシーンであるため、カットする必要はなかった。
そのほかにも雑誌に載っている淵さんが微笑んでいない、最初に岩崎を追う淵さんにスピード感がないなど、細かい部分の再現力が不足している。
アニメ版の見どころ
淵さんが最初に牙を見せるシーンである、車内での和やかなトークシーン。
ここでの淵さんの牙はおぞましく感じる出来であり、原作ファンも納得の出来だ。
淵さんが最初に岩崎を追うシーンは迫力に欠けていたが、珠枝を食べた後に淵さんが岩崎を追うシーンには迫力があった。
追われる岩崎に感情移入してしまうほど、恐怖感が再現されるシーンと言える。



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