2018年7月、黄島点心先生の新作『黄色い円盤』が発売された。
シリーズ第一弾の『黄色い悪夢』に続き、ホラーの枠組みを超えた奇想天外な発想を楽しんだ。
この記事では、シリーズ第二弾となる『黄色い円盤』のあらすじと感想を書き綴る。
『黄色い円盤』収録作品のあらすじ《ネタバレなし》
『黄色い円盤』には5作品が収録されている。
笑いあり、ホラーあり、SFありのバラエティに富んだ作品だ。
全世界・宇宙へ広がっていくSFファンタジー「円盤」
DJに憧れる幼いジャッキーは、兄と共に落ちぶれた科学者ドローの家を訪れる。
その頃上空には異変が。空飛ぶ円盤、レコードのドーナツ盤が次々と出現していた。
世界中が騒動となる中、ドローとジャッキーのコンビが奮起し地球を救おうとする。
おバカエロ!「プラスマイナスゼロ」
憧れの写真家・天晴(あっぱれ)との水着撮影に挑むモデルの甘露(かんろ)ちゃん。
天晴からもアプローチを受けており、なんとしてもここで撮影を成功させたい甘露だがでべそという悩みがあった。
アットホームな怪奇譚「宝毛と黒子毛」
独身の配管工・呑口(のみぐち)は面白くない毎日を過ごしていた。
ある日、アパートの隣室に母子3人が引っ越してくる。
呑口は快活な母・毬藻(まりも)に惹かれるが、この母子にはどこか奇妙な点があった……。
妊婦を襲う心理サスペンス・スリラー「赤い飛沫」
妊娠10ヶ月を迎えた緑と瑠璃彦(るりひこ)は思い出のビーチを訪れた。
和気あいあいと楽しんでいるかのように見えた二人だが、内心、妻は自分のお腹に注がれる夫の視線に怯えていた。
マッドサイエンティストvsヒーロー「盲脳」
優秀な外科医である範子(のりこ)は都会に疲れ、ふるさとの溝礼村を懐かしく思い出していた。
ある日、頭にコブが出来た子どもの手術を手がけ、驚くべき発見をする。その子のコブには肥大した脳の一部として不要な脳、いわば「盲脳」が詰まっていたのだ。範子は子どもを連れ、姿を消してしまう。
『黄色い円盤』収録作品の感想《ネタバレあり》
「intro」→「円盤」→「outro」のつながり
本書には5つの短編を挟み込むようにプロローグとエピローグが存在する。
「円盤」のスケール感にふわふわしながら4作品を読み、最後のエピローグでオチがつき、浮遊感が収まる。この作品群のつながりが心地よい。
「円盤」
この物語ではドーナツ盤のレコードと、宇宙の誕生から未来永劫まで万物を記録するとされるアカシックレコードをかけているのがミソ。
今まで自分たち人間が起こしてきた環境破壊を顧みるなど示唆を含んだ内容はSF感が満載で、ホラー漫画好き以外にも受け入れられるだろう。
ロズウェル事件が登場する部分ではサブカル好きもニッコリ。
私は専門家として登場するサターン博士が好き。(キャラグッズ欲しい……)
乱歩と感動「宝毛と黒子毛」
なかなか不幸な呑口(のみぐち)くん。
毬藻(まりも)に頼まれ、ネズミ退治のため屋根裏に上る呑口くんは当然のように毬藻たち家族の生活を覗く。
この背徳感!
『屋根裏の散歩者』のオマージュと思しき「宝毛と黒子毛」は呑口の悲哀に付き合い、酒を飲みながら読むのに最適だ。
もう一点、印象的なのが毬藻の子供たちである。
毛が人間に化身して日常生活を送るのにまるで怪奇を感じさせない子供の快活さ、母を救う時の感動は、ホラー漫画というよりもヒューマンドラマに近い。
個性豊かな女性陣
黄島点心の描く女性はなんとも魅力的だ。
- サブカル女子・星小夜子「intro」「outro」
- テンション高めのイマドキ女子・甘露「プライスマイナスゼロ」
- 支えたくなるシングルマザー・毬藻「宝毛と黒子毛」
- クールビューティー・緑「赤い飛沫」範子「盲脳」
私のイチオシは、星小夜子。
このサブカル女子感。パーカーの柄がひたすらにカワイイ。
まずは無料ためし読みをチェックすべし!
『黄色い円盤』収録作の一部はリイドカフェ公式Webから無料で読める。
気になる作品があれば、ぜひ読んでみて欲しい。
読めば手元に置きたくなり、単行本が欲しくなってしまうかも……
おわりに
黄島点心先生の『黄色い円盤』を紹介した。
前作の『黄色い悪夢』で蚊の恋愛ものを読んだときは、この人、気が狂ってるな。好き!となったが、今作『黄色い円盤』も楽しく気が狂っていて、大満足の作品集だった。
黄島点心先生の黄色いシリーズの第三弾を今から心待ちにしている。