悲壮なジョーカー誕生譚『バットマン キリングジョーク』ストーリー・感想・考察【ネタバレ】

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悲壮なジョーカー誕生譚『バットマン キリングジョーク』ストーリー・感想・考察【ネタバレ】

『バットマン:キリングジョーク』はバットマンの最凶の敵・ジョーカーがなぜヴィラン(悪役)になったのかが語られる作品だ。

バットマンはストーリーが1つだけでなく、物語がいろいろある。なので、ジョーカーが誕生した理由も1つではない。

そのなかでも私が一番好きなジョーカー誕生の物語が『バットマン:キリングジョーク』だ。

この記事では『バットマン:キリングジョーク』の登場人物、ストーリーを整理しながら作品の見どころに迫る。

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登場人物紹介

  • バットマン(ブルース・ウェイン)

バットマンシリーズの主人公。
昼はプレーボーイで大富豪のブルース・ウェイン。
夜は自警活動を行うバットマン。

  • ジョーカー

本作の主役。バットマンシリーズで一番知名度があるヴィラン(悪役)

白い顔に真っ赤な唇、緑の髪に紫のスーツがトレードマーク。

罪を犯してはバットマンに捕まり、アーカム・アサイラム(犯罪者用精神病院)からの逃走を繰り返している。

  • ジム・ゴードン

ゴッサム市警本部長。
バットマンとは友人・協力関係にある。

凶悪な犯罪者でも法に則った行動を第一に考え、バットマンにも強制する。

ストーリー

『バットマン:キリングジョーク』はジョーカーの現在と過去、2つのストーリーが交互に語られる。

【ネタバレ注意】
ここから先は作品の結末に言及している。未見の方はご注意願う。

ジョーカーの過去編

ジョーカーは働いていた研究所を辞め、コメディアンに転職した。

転職後は思うように稼げず、ジョーカーは焦る。家には身重の妻がいた。

妻子のために、巷に出没していたレッドフッドに扮して強盗に参加することにした。

しかし、その直前に妻が事故死してしまう。強盗までする理由がなくなったジョーカーだったが悪い仲間から抜けることはできず、渋々参加する。

レッドフッドに扮したジョーカーは被ったマスクのせいで視野が狭くなっていた。

そこにバットマンが現れ、ジョーカーは逃げる途中に工場のタンクに転落した。

工場の排水を通じて河岸に上がってきたときには、工場からの排水に含まれた有毒物質の影響で脱色され、髪は緑になり、顔の色は真っ白に変わっていた。

バットマンvsジョーカー編

バットマンはジョーカーに面会するため、アーカム・アサイラム(精神病院)を訪れた。
ところが、ジョーカーは影武者を立て、すでに脱走していた。

ジョーカーはつぶれた遊園地のオーナーを殺し、遊園地を手に入れた。
次に警察本部長ジム・ゴードンの家を訪れ、ジムの娘バーバラに発砲しゴードンを拉致して遊園地に連れ去った。

バットマンは一命を取り留めたバーバラからジムが連れ去られたことを聞き、救出に向かう。(なお、この事件によってバーバラは半身不随となっている。)

ジョーカーはジムの身ぐるみを剥がし、虐待した。さらにバーバラが撃たれて血を流している写真を見せて、ジムを苦しめようとした。

ジムが精神的に追い詰められたとき、バットマンが現れる。

バットマンはジムを助け出したが、ジムから「奴を捕らえたい。法規に則ってだ」と言われる。

バットマンはジョーカーを追いかけ、対峙する。「自分の人生は『不幸な一日』のせいで変わってしまった」というジョーカーに対して、「ジムは負けなかった。人間は不幸を正面から受け止める」というバットマン。

バットマンに追い詰められたジョーカーは自分を叩きのめせばいいとうなだれた。

バットマンは「このままではお互いの関係が殺し合いで終わってしまう」と手を差し伸べたが、ジョーカーは「遅すぎるよ…」といい決別を選んだ。

ジョーカーは最期にジョークを言い、ハハハ、と笑い始めた。
バットマンはジョーカーの首をつかみ、笑い声が止んだ。警察のライトが足元の地面を照らしていた。

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見どころ・感想・考察

ジョーカーを生んだ「不幸な1日」

ジョーカーがジム・ゴードンの家を襲撃し、娘を撃ってからジムを誘拐した理由は、どんな人間でも「不幸な1日」があれば人は大きく変わってしまう。
自分のように狂人になってしまう、ということを証明するためだった。

過去にうだつの上がらないコメディアンだったジョーカーも、「不幸な1日」を境に運命が変わってしまった一人だ。

妻が生まれてくる子どものため、哺乳瓶用の電熱器を試しているときに感電死した。百万に一つの不幸な事故だった。

その夜、やめようとしていた強盗に無理矢理参加させられ、同じく不幸な事故によって自らの容貌が変わってしまう。

これがジョーカーの「不幸な1日」だ。

ジョーカーはスーパークレイジーな男ではなく、元々は妻を愛する平凡な男だった。

『バットマン:キリングジョーク』は、このようにジョーカーの人間性を引き出した。

ジョーカーは、バットマンに対しても「不幸な1日」があったから自警活動を始めたんだろう、と問う場面がある。

その通り、バットマンにも幼少期に両親を殺された過去がある。
「不幸な1日」を体験した者の、光と影の対比を描いている。

バットマンとジョーカーの関係性

冒頭でアーカム・アサイラムを訪れたバットマンは、ジョーカーとの関係について、対話を試みている。

お互いに殺し合う前になんとかしたいとバットマンは願っていた。(結局本物のジョーカーではなかったが……)

ラストシーンではバットマンが改めてジョーカーに手を差し伸べている。

どんな不幸にあったかは知らないが、自分がいたら助けられたかもしれない。一緒に働けたかもしれない。もう自分を追いつめるな。苦しみを一人で背負うな。と伝える。

これを聞いたジョーカーが少し間をあけたあと、すまない。遅すぎる。と返す。
二人が不幸を分かち合っていたらどんな未来があっただろうか。

そのあと、ジョーカーのジョークを聞き終わり、バットマンはジョーカーの首に手をかける。

本作はここで終わっているので、バットマンはジョーカーを殺してしまったのか。ジムに言われたとおり捕まえたのかは分からない。

私が思うに、笑い続けていたジョーカーがふいに静かになっているところを見ると殺されてしまったのではないかと思う。

読者によって解釈が分かれるラストシーンとなっている。

Killing joke

「キリングジョーク」を辞書で引くと「おかしくて死にそうな冗談」と出る。
これはジョーカーが最後に放つジョークに意味を掛けている。

精神病院から二人の男が脱走した。

屋上に出て、一人目は難なく隣のビルに飛び移る。二人目は落ちるのを恐れて飛ぶのを躊躇する。

一人目の男は懐中電灯の光で橋を架けるから、それを渡ってこいと言う。

二人目の男はどうせ途中でスイッチを切ってしまうつもりだろう!と怒鳴り返す。

この二人の男はそれぞれ、バットマンとジョーカーを示している。
バットマンが手を差し伸べても、ジョーカーは相手を信用できない。
これがジョーカーからのメッセージだった。

ラストの2コマで水たまりに映る一筋の光が描かれている。
その光は地面に遮られて途中で分断され、光の橋が架かることはなかった。

おわりに

『バットマン:キリングジョーク』は私が初めて買った邦訳アメコミだ。

それまでアメコミはなんだか読みにくそうだと敬遠していた。

しかし、ティム・バートン監督の映画『バットマン』でジャック・ニコルソンが演じるジョーカーがずっと頭に残っていて、表紙を見た時に「これは!」となって購入した。

文字や絵柄の一部に箔押し風のコーティングが使用されていて高級感があり、装丁が抜群にかっこいい。

アメコミとしては薄くて読みやすいこと、豪華版の書籍(高くて5,000円程度)があるなかで2,000円程度で買えることも、手に取りやすいポイントだ。

キャラクターの人間性を深堀りした作品が好きな人にはアメコミ入門書としておすすめしたい。

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【参考】
『バットマン:キリングジョーク 完全版』アラン・ムーア/ブライアン・ボランド(小学館集英社プロダクション/DCコミックス)

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