伊藤潤二作品のあらすじ、登場人物はもとより、原作とアニメの違いや私が気になるポイントについても深堀りしていく【伊藤潤二徹底考察シリーズ】
この記事では、耽美な雰囲気が私の心をつかんで離さない『地獄の人形葬』をピックアップ。作品の魅力を読み解いていく。
『地獄の人形葬』のあらすじ
父は恐れていた。いよいよ娘に「人形化」の兆候が見られたからだ。
すでに、全世界の子供の30%が人形化したという。
そして娘も完全に人形化してしまった。夫妻は苦しい決断を迫られる。
『地獄の人形葬』考察
わずか6ページにぎゅっと詰め込まれた人間ドラマ
『地獄の人形葬』は全部で6ページの超短編だ。
これだけ少ないページ数でも物語はドラマチックに展開する。
両親は「人形化した子供を葬るべし」とする世間の風潮に反し、娘を家に置いておく決断をする。
なぜみんなが人形化した子供を葬ってしまうのか、理由を知らなかったのだ。
しかし、人形化の果てに醜い姿に変わってしまうと知ったところで両親は娘を葬ることができただろうか。
いや、自分の目で見るまでは到底納得しないのではないか。
『地獄の人形葬』では両親が「世間の常識」に疑問を持つものの、最後は抗うことができないという悲しみを描いている。
人形が朽ちていく過程
冒頭から人形化している娘だが、6ページの中で急速に朽ちていく。
変化の過程を追うと、
- 皮膚や関節にも変化が見られ表情がなくなるが会話は可能
- 動かなくなり、完全人形化
- おおよその姿は保っているものの、皮膚はひび割れている
- 本来の姿が崩れ始める
- 最終形態
という様相をしている。
作中では時間を示す証拠がないため、最終形態までにどれだけの時間を要するのかわからないが、両親の見た目には変化がない。おそらく短時間で変化するのだろう。
途中のページにはまだ元気だった頃の写真が登場し、娘の外見が劇的に変わってしまったことを読者に強く印象づける。
変わり果てた姿
『地獄の人形葬』は、丸々1ページを使い緻密に描かれた結末のシーンがトラウマ級の衝撃を与える。
グロ耐性がない人にはおすすめできないが、かえってその醜さに美が宿るという表現だ。
顔は細かくヒビ割れ、引き裂かれた口からは牙のような歯が生えている。首は長く伸びて折れ曲り、腕はびっしりと被毛で覆われている。ところどころに奇妙な触手も見える。
もはや人形ですらない、異形のモンスターに成り果ててしまっている。
私には、この朽ちた娘の顔が何かを訴えかけているように見える。
彼女は両親に伝えたいのではないだろうか。
醜くなってしまった私を許して欲しい、そして葬って欲しいと……。
この話、好きすぎて何度も読んじゃう
アニメ版『地獄の人形葬』を徹底解剖
この作品がアニメ『伊藤潤二コレクション』
ふたを開ければ、
娘が朽ちていく様子を固定のアングルで見せていたが、
原作との違い
ラストシーンで、人形を見せる角度が原作と異なる。
アニメ版の見どころ
なんといってもラストシーン。
原作では動きがなかったのに対し、アニメでは朽ちた娘がゴゾゴゾと動いていた。
ファンからは賛否ありそうだが、最終形態になると怪物になり動き始めるという解釈があっても良い。
より気持ち悪さが増した、アニメならではのシーンだ。
アニメで一番の完成度だ!
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人気シリーズ「押切異談」も収録されている。