新旧のテレビアニメはもちろん、コミックもコンプリートしている私がおすすめのエピソードを深掘りしていく【笑ゥせぇるすまん徹底考察シリーズ】
この記事で紹介するのは、初代アニメと新アニメのどちらでも放送された人気作『プラットホームの女』だ。
女性が持つ秘密とはなにか、そして『プラットホームの女』にはどんなテーマが潜んでいるのかを読み解いていく。
『プラットホームの女』のお客様
- 氏名:直木純一
- 年齢:23歳
- 性別:男性
- 職業:サラリーマン(アニメ:銀行員)
内気な青年のように描かれているが、やっていることはストーカーそのもの。
喪黒を頼るわりに文句を言う、笑ゥせぇるすまんのお客様テンプレのような人物。
『プラットホームの女』のあらすじ(原作)
直木は朝のホームでいつも見かけるマスクの女性に恋をしていた。
電車内で女性と並んで立っていた直木は、バランスを崩して寄りかかってきた女性を抱きしめてしまう。
女性は逃げてしまったが、直木の後ろには喪黒が立っていた。
直木は、マスクの女性を紹介するという喪黒の提案を一度は断ったものの、結局喪黒を頼る。
再び直木の前に姿を現した喪黒は、マスクの女性が今夜、直木の部屋を訪れると伝えた。
『プラットホームの女』の見どころ
喪黒の恐るべき情報収集能力
毎回どこからか「お客様」を見つけてくる喪黒だが、その情報収集能力はお客様以外にも発揮される。
直木が惚れている女性の情報もすぐさま収集し、直木に伝えている。
名前・年齢・既婚 or 独身・勤務先・住所……個人情報をすべて収集できるネットワークがあるのか、喪黒が自分で調査したものなのかは言及されていないが、喪黒の闇の一片が見られる場面だ。
トラウマを生むラストシーン
『プラットホームの女』といえば、ラストシーンがトラウマになる話として有名だ。
素性の知れないマスクの美女。
マスクを外した顔も整っており、体も美しい。
しかし、それは作られたものであり、女性が顔を叩くと顔が崩れ、潜めていた醜い顔が現れる。
この「素顔」の恐ろしさがトラウマになると言われる部分だ。
『プラットホームの女』のテーマ考察
私が考える『プラットホームの女』のテーマは、
「内面まで愛せ」
マスクの下の素顔
人の顔が隠されていると、その隠された部分が気になるのは当然だろう。
人は元来、秘密を暴きたくなるものだ。
『プラットホームの女』の登場する女性もマスクで顔を隠している。
それでもパッチリとした目から美しさが伝わってくるのだから、直木が女性に一目惚れするのも無理はない。
美が幻だったら?
ラストシーンで女性の外見の美しさは「崩れ落ちてしまう」のだが、これは女性からの優しさだったのでないだろうか。
女性からすれば、事実を隠すこともできた。
しかし、彼女は自分の美が作り物であることを正直に直木に伝えるのだ。
直木は愛しているだの、素晴らしさが分かるだのと言いながら、女性の心を見ることはなかった。
その美に惚れていた直木は、この事実を受け入れられないだろう。
藤子不二雄Ⓐ先生からのメッセージとは?
藤子不二雄Ⓐ先生は、人を評価するときに重要なのは、見た目や、イメージだけではないと伝えたかったのではないだろうか。
確かに、外見の美しさは最初の判断材料に足るものだろう。
しかし、その人の評価のすべてを外見という限られた情報だけで判断するものではない。
最初は外見で惚れたとしても、その人となりまで知ったところから本当の付き合いがはじまるのだ。
『プラットホームの女』新旧アニメ版レビュー
初代アニメ版『プラットホームの女』
原作からの変更点
『プラットホームの女』では、アニメで追加されたシーンがある。
喪黒から女性を紹介しようと提案されて断った後、直木が帰宅途中で女性を見かけてあとをつけるシーンだ。
今で言うところの「ストーカー」である。
一見理性的に見える行動の直後に、隠されていた狂気が表出するシーンだ。警察官に見とがめられて直木はすごすごと退散し、結局喪黒をたよることになる。
余談になるが勤務先の銀行に喪黒が現れ、直木の意思を確認するシーン。隣の窓口に、後ろ姿の頼母の妻と子供がいるように見えたが、口座の解約でもしているのだろうか……。
喪黒が女性の情報を伝えるために、暗いトンネルの中ぬっと現れるシーンも印象的だ。
降りしきる雨の中、喪黒が情報を伝える。薄暗い画面構成と怪しげな雰囲気が結末の悲劇を暗示させている。
クライマックスの女性が素顔を明かすシーン。原作では女性が拳で勢いよく自分の顔を殴っているのに対し、アニメ版では指で額に触れただけで顔面が粉々に砕けて割れた。素顔は原作に忠実に再現されている。
初代アニメ版の見どころ
アニメ版の見どころといえば、もちろん女性の顔が崩れ落ち、素顔が現れるシーンだろう。
ゆっくりを崩れ落ちる様は、キレイと感じるほどにキラキラとしており、その後に見える素顔とのコントラストが見事に表現されている。
雨のトンネルの密話も、怪しさがつまったいいシーンで、雨に打たれる喪黒の不気味さもアニメ版で見るべきシーンと言える。
原作本来の魅力を損なわずに新しいシーンを入れて、より素晴らしいアニメ作品になった。
NEWアニメ版『プラットホームの女』
原作・初代アニメからの変更点
まず、女性の外見が変化し、髪はロングになっている。
直木が喪黒の仲介を断ったあとに、銀行で喪黒と再会するシーンでは、原作・初代アニメともに窓口での会話だったが、NEWアニメでは応接室での対応に変化。
初代アニメであった直木が尾行するシーンや、雨のトンネルのシーンは無くなり、原作に沿った内容になったと言える。
(雨のトンネルは喪黒の不気味さを感じる良いシーンなので、カットされたのは個人的に残念だ)
ラストシーンで明かされる女性の素顔は、初代アニメよりもNEWのほうが刺激的に描かれている。
NEWアニメ版の見どころ
出演者の外見を変化させるなど、初代とは別の作品として作る意欲は感じた。
しかし、演出が過剰で初代アニメの出来がよかったことを再認識することになった。
見どころとしては、女性の素顔が初代よりもグロテスクなところぐらいか。
初代・NEWどちらも未見の方には初代アニメ版をおすすめしたい。
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初代アニメ版『プラットホームの女』
NEWアニメ版『プラットホームの女』