伊藤潤二徹底考察『双一の勝手な呪い』【ネタバレあり】

伊藤潤二徹底考察『双一の勝手な呪い』

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伊藤潤二先生への愛がほとばしる私、えむ(@mnb_yx)です。

伊藤潤二作品のあらすじ、登場人物はもとより、原作とアニメの違いや私が気になるポイントについても深堀りしていく【伊藤潤二徹底考察シリーズ】

この記事では、伊藤潤二作品の大人気シリーズである双一シリーズから『双一の勝手な呪い』をピックアップ。

双一が仕掛けた呪いの数々、そして『双一の勝手な呪い』の読みべきポイントはどこなのか、読み解いていきます。

注意
この記事はネタバレを含みますので、未見の方はご注意ください。
作品の説明で、一部不快な表現がある場合があります。お含みおきくださいませ。 

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『双一の勝手な呪い』のあらすじ

深夜の杉林。双一が人形に釘を打ち込むと同時に大谷が道に倒れた。

翌朝の教室では、大谷が入院したことが話題になっていた。

その喧騒のなかで、双一は新たな標的として黒田に目をつける。

下校途中にカエルを見つけ、持ち帰った双一は「冬眠の呪い」をかけようとしていた。

深夜の杉林で穴を掘った双一は、人形を土の中に埋める。

黒田の名前を呼びながら……。

双一シリーズにおける『双一の勝手な呪い』

双一シリーズ一覧-勝手な呪い
※この他に『魅入られた双一』もあります。

双一シリーズは、少年時代の双一が活躍する・少年編、大人になった双一が活躍する・大人編に分けられる。

今作『双一の勝手な呪い』は、少年編の作品だ。

双一シリーズでは路菜が登場する作品が多いが、『双一の勝手な呪い』に路菜は登場しない。

学校内での双一を見られる作品も数少ないため、双一シリーズのなかでは珍しい作品とも言える。

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『双一の勝手な呪い』の人物相関図

双一の勝手な呪い-人物相関図

『双一の勝手な呪い』には、主に3つの軸がある。

1.秋山・黒田

喧嘩で黒田に殴られ、復讐したい秋山と、復讐を実行する双一。

実際に秋山が双一に復讐を依頼する描写はない。

しかし、秋山が復習を依頼したことを感じさせる描写はある。

河合に黒田のことを聞かれたときに動揺している様子、渡り廊下での双一との密会、双一に外国製の懐中電燈をあげる。

この3点から見ると、秋山は恐らく双一に復讐の依頼をしたのではないかと推測できる。

2.山田・河合・石坂

山田・河合・石坂の関係が破綻していると思い込んで、呪いをかけてしまう双一。

河合と石坂の会話が少ないから仲が悪いと考えた双一は、河合、石坂に呪いをかける。

3人のなかで唯一呪いをかけられなかったのは、山田。

双一は石坂と河合の関係に興味を持っていたため、山田は難を逃れた。

3.地主

双一が呪いをかける場所として使っていた杉林。

『双一の勝手な呪い』は、杉に釘を刺したことで怒り狂っている地主と双一との戦いも見ものだ。

作中で一番怖いのは杉林の地主であることは間違いない。

 

『双一の勝手な呪い』で披露される双一の呪い

『双一の勝手な呪い』で披露される呪いはバラエティに富んでいる。

人形&五寸釘の呪い

被害者:大谷

『双一の勝手な呪い』の冒頭で披露されたのが、人形&五寸釘の呪い。

呪いの手法としては一般的ではあるものの、ワラ人形ではなく、かわいらしい人形が使用されている。

双一は、このかわいらしい人形を何体か所有しているようだ(『楽しい夏休み』でも同じような人形を複数持っている)

冬眠の呪い(カエル)

被害者:黒田

双一が下校途中に見つけた冬眠中のカエルからヒントを得た、冬眠の呪い。

いつもの杉林で人形を埋めると、黒田も埋められているという呪いだが、ここでもかわいらしい人形が埋められている。

このカエルはオチにも使われていて、物語に「一臭」加えている。

クモの呪い 1st

被害者:河合

河合がトイレから出られなくなり、ドアの上から出てきたクモから糸をかけられるという展開だが、その糸はトイレットペーパー。

おどろおどろしいクモの描写から、トイレットペーパーでグルグル巻きにされている耽美でユーモラスな河合が描かれるのは、まさに伊藤潤二先生ここにありというコントラスト。

えむ
トイレットペーパーでグルグル巻きになった河合の美しいこと美しいこと

クモの呪い 2nd

被害者:石坂

『双一の勝手な呪い』で最後の呪いとなる巨大スパイダーの呪い。

突然スケールが大きくなったこの呪いでは、巨大なクモの被り物を装着した双一が石坂を追いかけることになる。

街路樹よりも大きい「巨大スパイダー」杉林の杉よりも小さいが、かなりの大きさであると推測できる。

巨大スパイダーを使いこなす双一の身体能力の高さにも注目したい。

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双一が誤用する言葉

自分が優れている意として双一が使う「十人並み」だが、兄に誤用を指摘される。

兄が言うとおり十人並みとは凡庸の意だ。

兄から指摘された当初は意味が分かっていなかった双一だが、部屋に戻りコソコソと辞書開く様子は愛らしい。

ちなみにこの「十人並み」は『双一の勝手な呪い』冒頭で双一が自分語りをしているシーンでも使われている。

この時点で気がついた読者はいただろうか。

『双一の勝手な呪い』の残る謎

『双一の勝手な呪い』は、すべてがスッキリ解決するわけではなく、謎を残している。

トイレットペーパー

まずは、河合をトイレットペーパーでグルグル巻きにした方法だ。

双一が人形を使った呪術を習得しているとすれば、河合をトイレまで導いた手法までは理解ができる。

河合にクモの幻覚を見せる場面も、クモのおもちゃを使用したものだと描写がある。

しかし、トイレットペーパーでグルグル巻きにする方法については作中で言及されていない。

耽美とも言えるクモの呪いには別の呪術が使われていると考える他ない。

巨大スパイダー

次に石坂を襲った巨大スパイダーにも謎がある。

街路樹よりも高い背丈の巨大スパイダーを双一がどこに格納していたのか。

制作現場は布製教師を作っていた場所と同じく、屋根裏だと推測できるが、それにはスペースが足りないと思われる。

柔らかい素材ならば折り曲げて格納することもできるが、歩行に耐えうる強度や、地主が足をへし折っている描写があるため、柔らかいとは考えにくい。

唯一可能性があるとすれば、元々柔らかい素材を魔術で硬い素材に変えることだ。

それができれば、屋根裏での制作も可能になる。

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『双一の勝手な呪い』の華麗な伏線

『双一の勝手な呪い』では、丁寧な伏線がある。

  • 【伏線】双一が冬眠しているカエルを見つける→【回収】黒田を土に埋めて冬眠に見せる
  • 【伏線】秋山から懐中電灯をもらう→【回収】屋根裏からクモを見つけ、クモの呪いを思いつく
  • 【伏線】冒頭、杉に釘で人形を固定する双一→【回収】杉林の地主が人形と釘を発見し、犯人を探す

などの伏線があるが、特に秀逸なのが、下記の伏線だ。

  • 【伏線】河合、石坂が杉林に設置された罠を見つける→【回収】双一が罠にかかり、石坂が助かる

石坂が巨大スパイダー双一に追いかけられているスリリングな場面がパタンと止まるのが、この罠。

杉林を荒らした双一に罰が下るのだが、まさに因果応報という結末で、伊藤潤二先生が書いた勧善懲悪物語とも感じる。

アニメ版『双一の勝手な呪い』

原作との違い

アニメ『伊藤潤二コレクション』の記念すべき第1話に選ばれた「双一の勝手な呪い」

大筋は原作と同様に展開していたが、変更点もあった。

主な変更点

  • 渡り廊下で双一が秋山に声をかけるシーンがカットされた。秋山のなんとも言えない表情が良いシーンなので残念。
  • 地主が人形を踏みつけた音が、グシャ→ピィーに変更された。地主の威圧的な雰囲気を出すにはグシャのほうが良かった。
  • 杉林に入っていく地主が「こいつで犯人を八つ裂きにしてやる」というシーンがカット。地主のイメージのために残す必要があった。
  • 兄が双一を助けた後に「ビビったぜ」と思ったシーンがカット。ここは兄弟愛を感じるシーンであるため、兄に喋らせて欲しかった。

私が気になったのはだいたいこのあたり。

アニメ版の見どころ

細かいシーンだが、双一が秋山からもらった懐中電燈で自らを照らす演出は、双一の無邪気な一面が見られるユーモラスなシーンなので、見ておきたい。

やはり一番の見どころと言えるのは、巨大スパイダーになった双一が、石坂を追いかけるシーン。

原作でも迫力があるが、動画になるとさらに迫力が増していた。

双一の声に三ツ矢雄二をあてたことに賛否両論あったが、これはこれでアリだ。

えむ
アニメになってもクモの呪いは耽美だわ

※参考:伊藤潤二傑作集3 『双一の勝手な呪い』p227-290「双一の勝手な呪い」(朝日新聞出版)
※参考:『伊藤潤二コレクション』第1話「双一の勝手な呪い」(スマイラル・アニメーション)

『双一の勝手な呪い』のみ読みたい場合はKindle版で1作品購入するのがおすすめです。

『双一シリーズ』(少年編)をまとめて読みたい場合は、傑作集をどうぞ。(双一の愛玩動物は含まれません)

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ABOUTこの記事をかいた人

えむ

V系でプロのドラマーとして10年間活動後、引退しました。 過去の経験を活かし、バンドマンへのアドバイス記事を書いています。 現在はサラリーマンとして勤務する傍ら、古本屋めぐりとホラー漫画の収集に凝っています。このブログでは藤子不二雄(A)、伊藤潤二、呪みちるをはじめとして私が愛する漫画作品を紹介します。