伊藤潤二『血玉樹』ストーリー・おすすめポイント【ネタバレあり】

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血玉樹

伊藤潤二作品のなかでも、ある意味で壮大な奇作といえば『血玉樹』

木の枝に実る果実のような血の玉が人々を狂わせてしまうおぞましいストーリーは、まさに奇作。
部屋一面に広がる光景には、壮大さを感じる。

この記事では『血玉樹』のストーリーと私が選ぶおすすめポイントを紹介する。

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注意
この記事にはネタバレを含む。
また、生理的に不快な表現があるため、ご注意願いたい。

目次(読みたいところをタップ)

『血玉樹』のストーリー【ネタバレ】

安西と加奈は山道をドライブしていたが、安西の無理な運転とフロントガラスに何かが当たったことで事故をおこしてしまった。

フロントガラスには血のようなものが付いていたが、その元凶になるようなものは見つからない。

動かなくなった車を置いて山中を歩いていた2人は小屋を見つける。
安西は、小屋のなかにいる子どもたちに声をかけるが、そっけない反応で薄気味が悪かった。

2人が黙々と歩き続けていると、子どもたちがあとをつけてきた。
そして、蔦のようなもので加奈を叩き、加奈は首から出血してしまう。

血を見た子どもたちは豹変し、加奈に襲いかかる。安西も襲われ、手を噛まれてしまう。

なんとか子どもたちから加奈を助け出した安西だったが、加奈は子どもたちに血を吸われていた。

2人は町を見つけたが、荒れ果てていて人気がなく、壁には血のシミのようなものがある。

地面にも血溜まりがあり、それが点々を続いていた。その血を追っていくと屋敷にたどり着いた。

安西がドアのノックすると、屋敷の主人が現れ、2人を招き入れた。

主人は、加奈の手当てをしたあと、今日はここに泊まっていくように提案し、食事も提供してくれた。

夜になると主人は、奇妙な彼女の話をはじめる。孤独な女性だった彼女の手首には傷があった。
血を逃してあげようとしたらしい。その後、彼女は首にカミソリを当てていた。

主人が途中で止めに入り、必死になったあまり、彼女の首筋に口づけをした。そのあとから奇妙なことがおこる。彼女の首の傷から枝のようなものが伸びてきたのだ。

枝の先には実がなっていて、潰すと血のようだ。彼女は「血が大移動している。私は空っぽになる」と言った。

ある日、主人が彼女の家を訪れると、亡くなった彼女から伸びた枝は巨大なものになり、血がすべて大移動を終えていた。主人の話の最中に寝てしまった安西は目を覚まし、屋敷のなかで加奈を探す。

そして、主人が加奈の首筋に口づけする場面を目撃する。

部屋を出て行く2人に声をかけ、追いかけようとした安西だが、足取りが重く動けない。
そのとき、床に血痕を見つけた。血痕を追っていくと、ある部屋にたどり着く。

そこには部屋一面に枝が伸び、大量の血玉が実った植物があった。

後ろから主人が現れ、これが彼女だと言う。彼女を埋めたところ、これほどまでに成長したのだと。

加奈はどこにいるのかと問う安西だが、安西と同じ部屋で寝ていると告げた主人は、早く休むように言ってその場を去った。

主人が去ったあと、植物から声が聞こえた。この村の住人らしい。
住人によると数年前、町に現れた主人は、恐ろしい魔力を使って村人の血の実がなる植物に変えてしまったという。

その魔力は、傷口に口づけをすることで効力を発揮する。
助かるには自分の体に生えた実を食べるしかないが、食べてしまうと生き血を飲まずにはいられない体になってしまうそうだ。

加奈を連れて屋敷を出ようとした安西だが、主人に発見されてしまう。
安西は弱っており、ドアを蹴破る力も残っていなかったが、突如子どもたちがドアを破壊して屋敷に入ってきた。

そして植物の部屋で血の玉をすすり始める。
安西と加奈は、子どもたちへの対応に向かった主人の隙をついて脱出した。

加奈の首筋からは成長した植物が顔をのぞかせていた。
そして、安西の手からも小さな植物が芽を出し始めている。

自らも魔力にやられてしまったことに動揺する安西の横でチュッチュッと音が聞こえた。
加奈は自分の体から育った実を吸っていた。

『血玉樹』のおすすめポイント

血の実が育つという着想

屋敷の主人が話し始める「彼女」の話から、血の実がなる植物「血玉樹」の存在が明らかになる。
彼女の首から伸びる血玉樹は衝撃的なビジュアルで、その不気味なさと気持ち悪さはなかなか忘れられない。

血玉樹という着想は伊藤潤二先生ならではで、ストーリー展開も含めてぜひ読んでほしい。

部屋一面に育った血玉樹

血玉樹のインパクトがあまりにも強いが、その美しさも作品を楽しめるポイント。

屋敷の主人が語る彼女の亡骸に育った血玉樹は気持ち悪さもありながら、儚さと力強さを感じる。
そして、主人が育てていた部屋一面の血玉樹。

見開きで描かれる壮大な血玉樹はこの作品のなかでも、必見と言えるスケールの大きさだ。

えむ

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【参考】
・伊藤潤二傑作集8『うめく排水管』p123-182「血玉樹」

血玉樹

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