伊藤潤二作品のなかでも、SF色の強い作品『超自然転校生』
超能力というSF的な要素とホラーが混ざりあった物語にワクワクしてしまう作品だ。
この記事では『超自然転校生』のストーリーと私が選ぶおすすめポイントを紹介する。
『超自然転校生』のストーリー【ネタバレ】
超自然同好会の面々が集まったなかで、同好会リーダー・柴山は超能力でスプーンの先を落としてみせた。
柴山はこのスプーン曲げをテレビで披露することが決まっている。
同好会メンバーの北川も背後霊が見る能力があるが、柴山のほど注目はされていなかった。
翌日、学校では転校生の自己紹介がはじまる。
転校生の束野は、自己紹介のなかで、散歩をしていると不思議な体験ができると話し、柴山と同好会メンバーの細谷の興味をひいていた。
柴山と細谷は超自然同好会について束野に話し、束野は同好会へ参加することになった。
話が終わると、束野が近くの茂みで何かを発見する。それは目玉の生えた植物だった。
超自然同好会のメンバーが集まり、束野の参加を歓迎した。
目玉の植物を見た北川は、植物から武士の霊を感じるという。
束野に見せるため、柴山がスプーン曲げを披露すると、束野もスプーン曲げに挑戦し、成功させてしまった。
束野は、驚く一同に自分がやったのは金属疲労を利用したインチキだと白状する。
柴山に視線が集まったが、束野は柴山がやっているのは超能力だとフォローした。
束野のスプーン曲げを見たあとの柴山は、細谷とも話さず、束野の話にも反応しない状態になってしまった。
北川は柴山のスプーン曲げもインチキなのではないかと疑っている様子。
そこへ束野がやってきて、散歩中に発見したという滝を見に行くことになった。
滝にやってきた超自然同好会の一同。この滝の存在は誰も把握しておらず、一同は驚く。
驚きでようやく口の開いた柴山は、今さらスプーン曲げでテレビに出演しても視聴者は驚かないのではないかと悩みを話す。
それを聞いた束野は、滝に打たれて得たという超能力を使い、飛んでいる鳥を落としてみせた。
呆気にとられている柴山に滝に打たれた効力だと言う束野。それを聞いた柴山は、滝を見つめていた。
柴山が行方不明になった。
北川は思いつめて滝に身を投げたのではないかというが、束野はそれを否定する。
柴山は超能力を得るために滝に打たれに行き、転落してしまったのだと。
同好会一同は、柴山が滝に落ちた可能性があると伝えたが、警察は捜査に二の足を踏んでいた。
束野が神秘的な湖を見つけたと言い、同好会一同は湖を見に行った。住宅街だったはずの場所が湖に変わっており、一同は動揺する。
束野が湖で見たものを話そうとしたとき、細谷が話を止めた。柴山も束野を話を聞いたあとに行方不明になったからだ。
束野は笑いながら、「柴山は蘇ってくるかもしれない。危険を恐れるのなら超自然の探求はやめろ」と言い放つ。すると湖から恐竜が姿を見せ、また湖に沈んでいった。
細谷の家で、町の異変の原因は束野ではないかと話す同好会の女子3人。
3人が細谷の家に泊まる相談をしていたとき、ドアを叩く音が聞こえた。
「おれだ…柴山だよ…」
細谷は柴山が戻っていたと喜び、ドアを開ける。
そこにはパンパンに膨らんで、傷だらけの柴山が立っていた。
すぐにドアを閉めた細谷だが、柴山は超能力でドアを破壊し、家に入ってくる。
裏口から脱出した3人は北川の家を目指して走った。
角を曲がると北川の家があるはずのところには巨大な遺跡があり、北川は途方にくれていた。
異常な現象は、すべて束野しわざだと指摘にする細谷だが、その場にいた束野は否定する。
そのとき、柴山が現れ、超能力で遺跡を破壊してしまう。
柴山のビームが北川を当たりそうになると、北川は高く飛び上がり、柴山にビームを打ち返す。
2人の戦いぶりに盛り上がった束野が話し始める。
束野の話で、滝に現れた柴山を突き落とした北川は滝に打たれて超能力を得たことが分かる。
現場を見られていたことで、吹っ切れた北川は霊能力はインチキだったことを明かす。
北川はこの町を楽しくしようと束野を誘うが、束野は誘いを断り、転校していった。
束野が町を去ると、町は以前の状態を取り戻した。
結局柴山は生き返らず、北川は行方をくらまし、超自然同好会は解散した。
『超自然転校生』のおすすめポイント
スケールの大きいSF
『超自然転校生』はSFの要素が多い作品だ。
物語の最後には柴山と北川がビームのようなものを飛ばしあっているし、北川が空高く飛び上がる描写もある。
そのSF要素に華を添えるのが、ある日突然出現する滝、湖、遺跡(イースター島のモアイ?)などのスケールの大きさ。
滝は超能力を得る場所であり、遺跡は柴山と北川の超能力対決の舞台だ。
遺跡のおかげで、2人のバトルも迫力を増している。
柴山の変貌
北川によって滝に突き落とされてしまう柴山だが、戻ってきた姿が酷い。
パッンパンに膨れ上がり、傷だらけの体で細谷家の玄関に立つ姿は、おぞましさがあふれている。
そこまでパッンパンなのに、ズボンを履いて、ベルトをつけている几帳面さは柴山の性格を表している。
物語の冒頭に出てくる柴山と戻ってきた柴山を見比べるのも『超自然転校生』の楽しみ方の1つだ。
『超自然転校生』はSF要素のあるホラーが好きな方におすすめ
『超自然転校生』のみ読みたい方はKindle版がおすすめ。
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名作『血玉樹』『あやつり屋敷』も収録されている。