『呪みちる・稲垣みさおホラートークショー第13弾』レポート@よるのひるね

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『呪みちる・稲垣みさおホラートークショー第13弾』レポート (1)

2018年10月21日、呪みちる先生、稲垣みさお先生のトークライブが開かれた。ゲストは同じく漫画家の鯛夢(たいむ)先生。
この記事では、私が初参加したイベントの模様をレポートする。

イベント情報
  • イベント名:『呪みちる・稲垣みさおホラートークショー第13弾』
  • 日時:2018/10/21
  • 場所:よるのひるね(http://yoruhiru.com/)
  • 住所:〒166-0001 東京都杉並区阿佐谷北2-13-4
  • 入場料:¥1,500+ドリンク代
目次(読みたいところをタップ)

入場まで

私は開催2か月ほど前にTwitterで情報を見て予約をしていた。
本来9月に行われるはずだったが、台風接近のため順延されたという事情がある。

次の日程が決まってすぐに私は再度予約のメールをした。その後、予約だけで席は埋まってしまったらしい。

15時45分頃、現地に到着した。店の前にはすでに20人程のお客が並んでいた。

定刻の16時に案内が始まり、狭い入り口にお客が吸い込まれていった。この間、じりじりして待った。

このイベントではカウンターで入場料を支払い、ワンドリンクオーダーをする。同時にグッズ購入もできるようになっていて、全員が着席するまでに約20分を要した。

私は呪みちる先生の同人誌とステッカー、鯛夢先生の『機巧童子(からくりどうじ)』を購入。同行のクロジョは、稲垣みさお先生・呪先生の缶バッジを購入していた。

呪みちる・稲垣みさおホラートークショー第13弾・グッズ
購入したグッズ

トークライブの内容紹介

呪みちる先生:新刊『顔ビル/真夜中のバスラーメン』の裏話

最初の話題は、2018年9月に出たばかりの呪みちる先生の新刊『顔ビル/真夜中のバスラーメン』の裏話。

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さまざまな事情で出版が2年遅れたが、その分作品に手を入れ内容も厚くなったらしい。稲垣先生は「この2年で出版界の事情は大きく変わったよね。今は紙の本を出すのが大変」と頷いていた。

会場のモニターに表紙のイラスト案を映し出し、バージョン違いを見せてもらった。

「第3京浜の追跡者」のヒロイン・三島みどりの全身像をまず描いて、当初はこれと「真夜中のバスラーメン」のバスを背景に組み合わせる予定だったらしい。

しかし、今や漫画はインターネットで選ばれる時代。ネットのサムネイルで映えることを意識し「人物の顔のアップで」と編集者と相談して今の形になったそうだ。

私は当初の案の方が良いと思ったが、確かにAmazonなどで売られることを考えるとアップの方が目立つだろう。

次に漫画の加筆修正部分も、直々に解説された。

例えば「アメリカのコート」(p117)は1ページ丸々描き直し、コマ割りを横長から縦長に変更、セリフも大幅にカットしてスピード感を出している。

またクライマックス(p123)で1ページを丸々使用した大ゴマでの印象的なシーンも、元々なかったものを新たに描き下ろしたそうだ。

呪みちる『顔ビル/真夜中のバスラーメン』p126「アメリカのコート」
出典:呪みちる『顔ビル/真夜中のバスラーメン』p123「アメリカのコート」(トラッシュアップ)

「細かい設定に捉われてしまって、漫画としての演出がうまくできていないところを大幅に直した」と呪先生は語っていた。

ちなみに、これらの変更点は会場で発売された同人誌『死体洗い/おたのしみの手引き』にまとめられている。

表題作の「顔ビル」に登場する廃工場にはモデルとなった廃墟があり、実物の写真を見せてもらった。呪先生の実家の近所にあった清酒工場で今はもうないそうだ。

ここは最初から工場として設計されているため、普通のオフィスビルなどとちがって造りが変わっている。

先生は窓のサッシがアルミではなく鉄であることや、窓が非常に高いところにあることなどを指摘していた。写真を撮りに行った時は物置の近くに梯子が落ちており、梯子をかければ窓から内部を見られたのに……と残念そうに話してくれた。

ちなみに『口裂け女あらわる!』所収『黒い清涼飲料』に登場するコーラ工場のモデルも、同じ建物だそうだ。

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稲垣みさお先生:新作予告

稲垣先生は、今描いている永山則夫の伝記マンガの紹介をしてくれた。

永山則夫とは1960年代に世間を騒がせた犯罪者で、19歳で逮捕され死刑判決を受けたが、改悛して獄中で小説を書きデビューしたことで有名だ。(1997年に死刑執行された。)

永山則夫は悲惨な生い立ちで、幼少期から虐待を受けていたり、姉が精神病で入院していたりと家庭環境も複雑であったらしい。

まんが王国に9回に渡って連載される予定で、「虐待の話は読まれる」と編集者が力を入れて話していたそうだ。確かに、ネット広告でも幼児虐待を扱った電子マンガは頻繁に見る印象だ。

稲垣先生の著作は他にも多数まんが王国で読める。

鯛夢先生:不思議な話

後半はゲストの鯛夢先生が登場し、怪談を披露してくれた。

初めに先生の本棚や作業部屋の写真紹介があって、部屋に水槽があるところからペットとして飼っている熱帯魚の話題へ。稲垣先生がクマノミの名前を聞くと、鯛夢先生は「名前はつけちゃいけないんですよ」

「え、どういうことですか!?」

鯛夢先生も以前は飼っている魚に名前をつけていたらしい。はじめは飼い方がわからなくて、飼ってもすぐに死なせてしまうことが多かった。そのうちに慣れてきてすぐに死なせることはなくなったが、それでもやはり飼っているうちに死んでしまう。

ペットショップの店員に相談すると「魚に名前をつけていませんか?」と聞かれた。

魚に名前をつけると死んだ後成仏できずあがっていかないので、次に来る魚も引きずられて死んでしまうのだという。

水槽の「場」を変えるためには、一旦死んだ魚を水槽に入れて「よりしろ」のようにして今までいた魚を連れて行ってもらう必要がある。

鯛夢先生は半信半疑だったが、たまたまお店に死んだ魚がいたのでそれをもらって言われたとおりにすると、確かにその後魚が長生きするようになったらしい。

店員は怪談のつもりで言っているわけではなく、その業界に伝わる「迷信」のようなものとして話してくれたそうだ。

心霊を信じているのは鯛夢先生、稲垣先生で、呪先生は信じていないそうだ。
鯛夢先生いわく、自分は見えないけれども夫人がよく見える人で、いっしょにいるうちに自分も「なにかいやな感じ」ぐらいは感じるようになったらしい。

稲垣先生は元々信じていなかったが、ある出来事を境に変わったとのこと。
「心霊はいる」と信じるに値する不思議な出来事があったのだとして、そのエピソードを語ってくれた。(ネットに書かないでと言われたのでエピソードは割愛)

鯛夢先生自身は見えないので、おもに不思議な話や夫人が体験した話を中心にいくつかの話を語ってくれた。

そして「このイベントで話したいと思っていた、とっておきのエピソードがあるんです」

しかし「この話は、人に話してはいけない」と感じさせる「警告」のような現象がいくつか重なって、全部を話すことは断念したらしい。

その話を一部だけ紹介してくれたが、心霊ぎらいの稲垣先生は「こわい、こわい!」と叫んで耳をふさいでいた。(この話も危険なので割愛)

13回記念・参加者プレゼント

このイベントは今回で13回目。ホラーのイベントとして記念すべき13回目ということで、特別に色紙、ポスターなどの参加者プレゼントが用意されていた。

怪談でヒヤリとした会場を暖めるようにジャンケン大会が始まり、同行したクロジョが勝ち抜いて呪先生のポスターの1枚をゲット!

呪先生のサイン入りポスター
クロジョが当てた呪先生のサイン入りポスター

お台場で開かれた『サディスティックサーカス』の告知に使われたポスターで、隅の方に呪先生直筆のサインが入っているお宝だ。クロジョの強運にびっくりしつつ、イベントは終幕となった。

イベント参加のTips

店内は狭いので、荷物はなるべく小さくまとめるか、駅のコインロッカーを利用するのがおすすめだ。

また座席も小さいスツールが多く座面が硬いので、腰痛持ちの人は、お尻に敷くクッションシートのようなものを用意していくといいだろう。

1時間ごとに休憩はあるものの、2時間半も座っているとだんだんお尻が痛くなってしまった。

あと、質問コーナーがあったのでファンの人は事前に聞きたいことをメモしてから参加した方がいい。(私はとっさに質問が思いつかずにもったいなかった)

私の感想

呪先生の新刊発売直後だったため、前半の話は呪先生が中心。後半のゲストトークでも真ん中にいる稲垣先生がうまい具合に合いの手を入れて、話が弾んでいた。

13回も行われているだけあって、呪先生・稲垣先生の息が合っていておもしろかった。

特に、作品の成立過程や演出のこだわりが聞けたのがファンとして有益だった。昨今の出版事情なども聞いていて勉強になった。

デジタル化で失われるものは何かという話では「写真だとまだいいけれども、スキャンしてしまうとダメ」つまり、のっぺりしてしまってペンのタッチが伝わらないということを呪先生が話していた。

鯛夢先生は完全にデジタル化したが、ペン入れはアナログに戻すか検討中。楳図先生の作品のような、情感のあるタッチがデジタルでは表現しにくいということらしい。

私は紙の質感を愛しているため、この辺りは感覚的によく理解できておもしろかった。紙の出版文化が絶えないためにも、今後も愛読する漫画家の作品は紙の書籍でなるべく買い集めていきたいと思う。

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『呪みちる・稲垣みさおホラートークショー第13弾』レポート (1)

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