伊藤潤二『寒気』ストーリー・おすすめポイント【ネタバレあり】

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伊藤潤二作品の中でも人気の高い作品である『寒気』
『寒気』は伊藤潤二先生の発想力と、ショッキングな描写がおぞましいホラー短編漫画だ。

この記事では『寒気』のストーリーと私が選ぶおすすめポイントを紹介します。

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注意
この記事にはネタバレを含む。
また、生理的に不快な表現があるため、ご注意願いたい。

目次(読みたいところをタップ)

『寒気』のストーリー

裕史の部屋からは隣家の裏庭が見える。あまり日が当たらず、草木が伸び放題になっている裏庭。
その裏庭を通る医師を見かけた。隣家の梨奈ちゃんの診察するためだろう。

梨奈ちゃんは裕史よりも2,3歳年下の女の子で、生まれつきの病気のせいか、家にひきこもっている。
医者嫌いの梨奈ちゃんの部屋からは、医師がくるたびに叫び声が聞こえる。

医者が帰ったあとの夜には「虫!虫が来る」などと叫んでいた。

たまに梨奈ちゃんが窓から顔を出すこともあるが、うつろな目で裏庭を見つめているだけ。

ふと裕史を見つけるとニコリと微笑み、裏庭の北側を指差すのだった。無数の穴が空いた腕を窓から出しながら。

裕史の記憶が蘇る。

裕史の祖父が亡くなった。
祖父の部屋には行くなと止められていた裕史だが、母の静止を振り切って祖父の部屋に入る。

そこには全身穴だらけの祖父が横たわっていた。
梨奈ちゃんと祖父の話を友人の英夫に伝えた裕史だが、英夫は信じてくれなかった。

ある日、裕史の家を訪れた英夫は、英夫の母から聞いたことを話し出す。

看護師をしていた英夫の母は梨奈ちゃんが生まれたときに立ち会っていて、そのときは泣きもせず、呼吸もしていなかったという。

そして、2,3日すると体中に穴があきはじめ、その穴から呼吸していたらしい。
ここまで話した英夫は母の悪趣味な冗談だろうと信じていなかった。

話しながら裕史の本棚を見ていた英夫が、本棚から裕史の祖父の日記を発見し、二人で日記を読み始めた。

【祖父の日記】

  • 戦友の米津と会った。米津は冬でもないのにコートを着込んで、翡翠の彫板(ひすいのちょうばん)を見せてきた。
  • 米津は古物商から翡翠を買ったが、手放したがっていたようだ。
  • 翡翠は戦時中に同じ部隊だった吉村が見つけたもので、その後、吉村が奇病にかかったことを告げると、米津は翡翠を置いて帰っていった。
  • 翡翠に見せられた祖父は寒気が止まらなくなり、医者にかかるが、風邪と診断された。
  • その後、頼みもしないのに医者が注射をうちにきた。
  • 体中に穴があきはじめ、そこから風や虫が入ってくる。
  • 翡翠が原因と考え、外に投げたが隣家の裏庭に落ちてしまった。
  • また医者がきて、翡翠のことを知っている様子だった。

翡翠の呪いを信じた裕史は、その呪いが梨奈ちゃんにかかってしまったと考えていた。

そのとき、梨奈ちゃんが窓から顔を出し、また裏庭を指差した。その様子を見た英夫は寒気がしてきたといい、帰ってしまう。

英夫が帰ったあと、隣家の裏庭で翡翠を探す裕史だったが、翡翠は見つからなかった。

梨奈ちゃんの主治医と祖父を診ていた医者が同一人物ではないかと考えた裕史は、医者が隣家の裏庭にある、翡翠を狙っているのではないか疑念を抱く。

裕史の部屋の外からは、ガサガサと音が聞こえていた。
隣家に翡翠の呪いについて話すべきか考えていた裕史は、道ばたでたまたま出会った英夫に相談する。

裕史の祖父のせいにされたらどうするのかと言う英夫に、裕史は翡翠の呪いについて言わないことにした。

自分の部屋に戻ってもモヤモヤしていた裕史だったが、隣家に翡翠の呪いを伝えると決めた。
そして、裕史が外を見ると裏庭に出ている梨奈ちゃんを見つける。梨奈ちゃんの体からは穴が消えていた。

嵐の晩。
リビングでテレビを見ていた裕史は、ガタガタと鳴る自分の部屋の窓を見に行った。

カーテンを空けるとそこには、体中穴だらけの男が立っていた。
その男は英夫だと名乗り、手に持った翡翠を見せた。

二人で裕史の祖父の日記を読んだあとに、隣家の裏庭で翡翠を見つけたらしい。
翡翠に魅せられてしまった英夫は、体に穴があいても翡翠を捨てられなかった。

そして、医者から逃げてきたと叫んだ。
あの医者は緑の注射を打つ、呪いの使者で、翡翠を持つもののところに現れるのだという。

ここまで話した英夫は、すぐ近くまで迫ってきた医者に気づき、逃げたした。
その医者は梨奈ちゃんの主治医だった。

翌日、川岸で英夫の亡骸が見つかった。翡翠の行方は分からない。

『寒気』をおすすめする理由

寒気の元凶

まず寒気を感じる原因が体中に穴という発想に驚く。
冒頭で梨奈ちゃんが虫を異常に恐れ。その原因が祖父の日記によって判明する。

想像しただけでも恐ろしい……。まさに身の毛もよだつ話だ。

変わり果てた英夫の気持ち悪さ

今回の見どころの1つは体中にあいた穴だが、本当におぞましい。
ページをめくって、穴だらけの英夫が出てきた時は思わずのけぞってしまいました……。

英夫もなかなかですが、おじいさんも怖い。

えむ

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【参考】
・伊藤潤二傑作集7『首のない彫刻』p293-324「寒気」

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