伊藤潤二作品のなかでも、私が大好きな作品である『隣の窓』
気品溢れるグロテスクな奥様が登場する『隣の窓』だが、読んだら最後、奥様の魅力にやられてしまう。
この記事では『隣の窓』のストーリーと私が選ぶおすすめポイントを紹介する。
『隣の窓』のストーリー【ネタバレ】
ヒロシは父が購入した家に引っ越すため、ある町にやってきた。
中古とはいえ、結構な安さで売られていたため、ヒロシと母は幽霊でも出るのではないかと話していた。
引っ越しが終わり、両隣の家に挨拶に行く、ヒロシと母。まずは右隣の家へ向かったが、留守のようだ。
ヒロシは右隣の家の窓が2階にある1つだけであることが気になっていた。
左隣の家の奥さんには挨拶が出来たため、母が右隣の家について質問する。
左隣の奥様いわく、右隣家は
- いつもカギがかかっている
- 夜になると2階の窓に人影が映る
- めったに外には出ず、左隣の奥様も引っ越して10年姿を見たことがない
- 近所の噂では、変わった中年女性が住んでいる
夕食を終えたヒロシは2階の自室で戻った。
窓を開けると、真正面に見える右隣の家の窓になにか嫌なものを感じる。
その夜、寝ていたヒロシは声を聞いた。「ぼっちゃん」と呼んでいる。
窓を開けると、右隣の家の窓から着飾ったバケモノがこちらを見ていた。
そのバケモノは「家のカギを開けて待っています」と言い放った。
怖くなったヒロシは窓を閉めて、ふたたび寝た。
次の日の夜。またもや「ぼっちゃん」呼ぶ声が聞こえる。
昼間来なかったことが不満なようだ。
ヒロシが無視を決め込んでいると、「私のほうから伺っていいですか?今から伺いますね」と言い出したバケモノ。
とっさに窓を開けたヒロシは、物干し竿をこちらに渡そうとしているバケモノを目にする。
必死に物干し竿を叩き落としたヒロシは、両親に助けを求める。
両親がヒロシの部屋を見に来たものの、その時にはバケモノはいなくなっていた。
それからしばらくは両親の部屋とヒロシの部屋を交換していたが、両親はバケモノの被害にあっていなかった。
時間が経ち、自分でも夢を見ていたのではないかと思い始めたヒロシは自室に戻る。
その夜、また声が聞こえた。
「もうすぐ手が届きそう」「ノックしたら開けてください」など恐ろしいことを言い出すバケモノ。
寝ずに待ち構えるヒロシだったが、その夜はノックがなかった。
しかし、バケモノは着実に近づいてきていた。
その証拠に隣の窓が異様にせりだして、ヒロシの家に近づいていたからだ。
『隣の窓』のおすすめポイント
甘々な展開と真逆のホラー
自室の部屋を夜にノックしてくるとか、呼びかけてくるとか、ラブコメやギャルゲーにありそうな展開だが、伊藤潤二先生に描かせれば、それはもうホラー。
見るもおぞましい奥様が果敢にアタックしてくる姿は、恐怖以外の何物でもない。
ヒロシだけを狙ってくるのも奥様の好みだからだろうか。
この家が安く売られていた理由もよく分かる。
着飾った奥様
ヒロシに会いたがる奥様だが、見た目は完全にバケモノ。
そんな姿なのに、指輪はするわ、ネックレスはするわ、ブレスレットはするわで、キレイに着飾っている。
乙女だ
確かにバケモノで怖いが、その心意気だけは買いたいピュアで気品溢れる奥様だ。言葉遣いも丁寧だし。
『隣の窓』は不気味なホラーが好きな方におすすめ
『隣の窓』のみ読みたい方はKindle版がおすすめ。
『隣の窓』が収録された単行本を購入するなら『伊藤潤二傑作集9 墓標の町』
伊藤潤二先生の名作『長い夢』『なめくじ少女』も収録されている。